
モンゴル国民の伝統と力について(2002年09月23〜27日)
今まで何度かモンゴルの現状について警鐘を鳴らしてきた。ここでは、それとは逆に、モンゴルの継承すべき点をここ一週間限定で拾ってみよう。
2002年09月23日から3日間、「窓口相談」研修が科学技術情報センター図書館で行われ、モンゴル国立大学、シギホタグ大学、ウランバートル大学の法学部学生・教師および弁護士立ち会いの下で、貧困家庭に対し、刑法、行政法に関する無料法律相談を実施した。
これは、1990年代以降のモンゴル社会で起こっている、急激で否定的な変化に対して、それに無防備な国民が、法制面から、その変化に対応できる力を身につけるための試みである。現在は、法律の網の目をかいくぐって、利得を図るものが支配層以下非常に多い。国民がそれに対抗しうるために、法律の知識を身につけることは重要なことである。
2002年09月24日、セレンゲ・アイマグで、「ウルグン・セレンゲFM104」ラジオ放送が、国営企業「エネルゴ」社と協同で、電気暖房費支払いが滞っている386世帯に対し、その費用の15%を肩代わりした。
これは、1980年代の相互扶助精神が地方ではまだ残っている、ということである。こうした伝統は国民力の基礎になる。
2002年09年24日、政府官邸で、「国民のための社会保障部門従事者」というテーマで研修会が行われた。ここで、社会保障関係職員の役割の重要性が強調された。
こうした研修会がわざわざ開催されたこと自体、社会保障部門が等閑に付されていおることを表わしているが、この部門の成果は継承していかなければならない。IMFなどの干渉によってそれが切り捨てられようとしているけれども、モンゴル国民は決してそれを許してはならない。その意味では決して無意義なものではないだろう。ウヌードゥル新聞2002年09月24日付で、「家族の秋の計画」と題して、自分の子供の大学生活のために、オブス・アイマグからウランバートルに移住してきた、平均的モンゴル人の生活が描かれている。こうした人々の生活を安定させるためには、社会保障の充実が肝要である。これを獲得してきたのもまたモンゴルの伝統なのである。
2002年09月25日、ウランバートル市バヤンズルフ区では、一人暮らしの老人に対し、総額48万トグルグ相当の衣料、住宅修理、食料などを支援した。さらに、市(区)当局は、9人の老人に対し住宅を支給し、無料医療を行った。これは、27日にハンーオール区でも実施された。
この2002年10月1日から、年金・給料の20%増額が決定された(決して満足すべき額であるとはいえないが)。モンゴルでは1990年代以降、老人への敬意が低下している、ということが問題になっている。老人への敬意とその生活の安定はモンゴルの伝統である。
2002年09月25日、オヨン国会議員は、トゥブ・アイマグ(自分の選挙区)で、ホルショー(協同組合)設立および利用方法について、Ц.ガンホヤグ前国会議員を講師に招いて、研修会を開催した。
政府は国会議員に特別ボーナスを支給し、その資金を国会議員自身の選挙区で、選挙民のために利用するようにした。ほとんどの議員は、音楽会開催のための楽器などを購入した。かつて日本でもあった、「ふるさと創世」とかいう、ばらまき政治の典型である。それに対し、オヨンは、地方の人々が自力で経済力を身につけることができるように研修会を開催した。遊牧にとって協同は不可欠である。そのための協同組合設立は、1990年代以前の協同組合とは質的に違うものにならなければならないのはいうまでもない。
2002年09月26日、モンゴル学生連盟は、火災鎮火活動のために、30万トグルグを募金した。
モンゴルで火災が頻発しているが、地方行政府がそのための費用に地方予算を充てているため、教師や医師に給料が支払われない、という(ウドゥリーン・ソニン新聞2002年09月27日付)。自然環境破壊への危機感に加えて、そうした社会的不正(不合理)に対する学生の批判が根底にある。未来は若者にかかっている。若者が社会意識に鋭敏であることは、その社会の健全さのバロメーターである。(2002.10..03)
