三井物産賄賂事件に対するモンゴル指導層の対応(2002年09月06日)

モンゴルへの政府開発援助(ODA)の一つ、「第4次村落発電施設改修計画事業」に係わる三井物産の賄賂事件が、日本の新聞各社によって報道された(8月28日)。

日本の三井物産社員が、モンゴルのインフラ省燃料エネルギー政策調整局長に総額130万円の賄賂を贈ったというものである(読売新聞2002年8月28日付)。

これは、日本資本主義における、「親方日の丸」=「ダンゴウ(談合)」と、対第三世界進出戦略=政府開発「援助」とが醜悪なまでに結合した、典型的な事件である【注:結局、最高検察庁はこの事件の立件を見送った。「政財界からは『日本経済が苦しい時に、日本企業の競争力を弱めることにならないか』と危惧(きぐ)する声が上がっていたという」(読売新聞2002年09月13日付)、ということが事実であれば、一層唾棄すべき「醜悪」さである。[2002年09月14日追記]】。

何れにしろ、日本国民の税金が、日本の一私企業に流れ込む。これをただすのは日本国民の義務である。

ここでは、モンゴル側の対応について述べたい。

まず、モンゴル外務省は、日本・モンゴル外交関係樹立30周年記念の年に、このような報道がなされたことに対し、日本政府に「遺憾」の意を表した(ウドリーン・ソニン新聞2002年09月06日付)。これは、事実を認めたのではなく、祝福すべき年に報道がなされたことに対してのものである。つまり、無意味な外交儀礼にすぎない。

次に、インフラ省燃料エネルギー政策調整局長はこの疑惑について、ウヌードゥル新聞とのインタビューで、全面否定をした..(ウヌードゥル新聞2002年09月06日付)。

さらに、インフラ相ジグジトは、それをうけ、「一方がイエスといい、また一方がノーというのでは話にならない。これはプライベートな問題である」、と述べた(ウヌードゥル新聞2002年09月06日付)。

これは、「プライベートな」問題では決してない。モンゴルにおける「汚職の蔓延」と「援助漬け」の問題である。

モンゴルにおける「汚職」の撲滅こそ、社会的責務であるとして、オヨン議員が1999年に汚職対策法を国会に提案したが、与党人民革命党の反対で採決されなかった(ウドリーン・ソニン新聞2002年09月04日付)。また、ウヌードゥル新聞などもここ何年か反汚職キャンペーンを張っているし、イル・トブチョー新聞も電子版などで精力的に取り上げてきた。だが、いっこうに効果が上がらない。

特に就職や脱税のための賄賂が横行している、という(ウヌードゥル新聞2002年9月04日付)。

この「第4次村落発電施設改修計画事業」は、かの「民主化運動の13人」の一人、ゾリグがインフラ相の時(1998年)、日本の「無償援助」によって実施されたものである(ウヌードゥル新聞2002年09月06日付)。

地方の電化はその地方の人々が望むものであれば、それを実現するのは政治家の義務である。ただ、その実現はモンゴル自身の財政で、モンゴル自身が研究開発して行わなければならない。極言すると「ばい菌」ともいうべき日本資本主義に依存するのは論外である。まして、真の独立を求めて立ち上がった人々の一人であったのなら、当然そのようなことはすべきではなかった。

その上、別の論説では、日本の新聞が証明されない記事を書いて中傷したことは、モンゴルを小国扱いしていることの表れである、いずれにしろ、この事件によって日本の援助が減るのではないか心配だ、と述べられている(ウヌードゥル新聞2002年09月06日付)。

こうした発想の背景にある、モンゴル指導層の政策をただすのもまた、モンゴル国民である。(2002.09.08)

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