
商業発展銀行の民営化が延期された(2002年05月07日)
国有財産委員会(モンゴルの国営企業を経営統括する部署で内閣の省待遇)は、5月7日、商業発展銀行の政府所有株76%を民営化するための公開入札を延期した。
これは、公開入札に参加表明をした企業法人および個人(名は非公開だが、入札金額からみて外国企業だとおもわれる*注)が、モンゴル銀行制度の法的未整備、入札最低設定価格への不満、などを表明したからである。要するに、モンゴルの銀行への投資には不安感があるということだ。
このことは、同じくモンゴル国営の基幹産業であるゴビ社(カシミア製造販売)前社長Ц.セドバンチク(米留学中)が、『ウヌードゥル』新聞のインタビューに答えて、アメリカ人は「ゴビ」社に関心がない、といっていることからもわかる(2002年5月10日付)。
これと同じような類の理由で、2002年の民営化日程に名がのぼっている、MIAT(民間航空機輸送)、NIC(石油製品輸入)の民営化作業も難航している。
民営化された企業としては、APU(酒類醸造販売)がある。ところが、その経営引き継ぎを巡り、新旧経営者が対立し、操業が危ぶまれている。しかも背後にはロシア・マフィアの存在が指摘されている。農牧業銀行は民営化はされていないが、米国際開発協会のエージェントが乗り込んで、経営権を握った。
エンフバヤル政権は、外資導入による国内産業振興(形容矛盾だが)、その一環としての基幹産業民営化を推進している。これは、IMFなどの産業構造「改革」計画に従ってのことである。
民営化の難航は、指導層や国際機関にとっては、頭痛の種かもしれない。だが、国民にとっては、決して「頭が痛くなること」ではない。外資に経営権を握られて、国際価格の上下によって経済が左右されたり、伝統産業が破壊されたりするだろう(酒、石油、カシミア、そして銅・モリブデンなどの企業)。
かつて1940年代に、ロシア・東欧型の急激な社会主義工業化が試みられた。これは成功せず、伝統的遊牧に基礎をおく農工国家から工農国家へ、という計画に切り替わった。これは、詳細は省くが、1920年代末1930年代初めの急激な集団化失敗の歴史を学んだからだ。
現在、モンゴルが歴史に学ぶことは、民営化と称する、急激な資本主義化が、国民に与える深刻な影響を、少しでも回避することである。(2002.05.16)
*注: その後、国有財産委員会委員長プレブドルジ自ら記者会見して、その入札者は、モンゴル・アメリカ合弁企業「商業発展銀行受け入れコンソーシアム」と、スイス・アメリカ国際資本合同「バンカ・コマーシャル・ロガノ/ジェラルド・メタルズ」である、とあかした。
**注: この10年間の民営化資料(「
民営化の10年」)を掲示しておきたい。
