五番隊編 十一
その日の夜半、日番谷は雛森が教えてくれた通りの道順を迷い無く歩を進めていた。
雛森の部屋は五番隊の上位席官達の私室とは少し離れた処にあった。
五番隊で唯一の女性の上位席官である雛森を気遣っての藍染の配慮だったが、今の日番谷
にはとてもありがたいことでもあった。
「・・・雛森・・・・・俺だ、日番谷だ・・・」
雛森の部屋の前に辿り着き、呼吸を整えてから戸口でそぉっと声を掛ければ、すぐに障子戸
が開き、夜目にも明るい雛森の笑顔が日番谷を出迎えた。
「日番谷さま、本当に来て下さったんですね」
「う、うん」
「嬉しい!」
部屋に招き入れられ、ぎゅっと身体にしがみ付かれた日番谷はどきどきと高まる鼓動との格闘
を余儀なくされながらも、しっかりしろと自身を叱責する。
そんな日番谷の手を引き、雛森は隣室への襖を開ける。
そこには枕を二つ並べた夜具が敷かれてあった。
「ひ、雛森・・・」
ごくんと息を呑む日番谷に、『善い夜にしましょうね』と雛森は微笑んだのだった。
白い夜具の上に向かい合わせに座った二人は、ゆっくりと唇を重ねる。
そして雛森の柔らかな唇の感触にうっとりとなった日番谷の手を、雛森はそっと自分の夜着の
腰紐へと導いた。
「日番谷さま、私の夜着を脱がせて下さいませ」
「わ、判った」
思い切って、えい、とばかりに腰紐を引けば、しゅるりと小気味の良い音がし、いっそ呆気ない
程容易くはらりと夜着の前が開け、眩しい白さの雛森の素肌が目の前に曝け出された。
(わぁ!)
雛森の裸身は先程湯殿で目にしていたが、それでも心拍数が一気に跳ね上がる衝撃だった
しかしここで目を逸らしたりすれば却って雛森に失礼なのかとも思い、日番谷は頬を赤らめな
がらもガン見の態だった。
こんな時、物慣れた大人のオトコならば、相手を褒める言葉の一つや二つはすぐに出てくるの
だろうにと、日番谷は固まったまま自身を情けなく思う。
そんな日番谷に対して、雛森は少し恥ずかしそうに身動ぎする。
「すみません、日番谷さま。・・・私、やっぱりおっぱい小さいですよね?」
「え?・・・あっ、いや、そ、そんなことはない! ・・・ってか、俺はむしろそれくらいが調度良い
と思うぞ! 人の身体は均整がとれているのが一番美しいのだから、胸だけでかくてもおかし
いじゃないか」
ナニをバカなことを口ばしっているのかと思いながらも、真っ赤になって力説すれば、雛森が
嬉しそうににこにこと笑う。
「日番谷さまがそう思って下さってるなんて安心しました! それじゃあ今度は私が日番谷さま
を脱がせて差し上げますね」
雛森は大人しくされるがままに夜着を脱いだ日番谷の幼い裸身に優しく目を細める。
「日番谷さまは鳩胸なのですね。大人になったら凄くカッコ良くおなりですよ」
「うん。市丸・・・副隊長にもそう褒められた」
碧の瞳を煌かせる日番谷の華奢な両肩に自身の手を置き、雛森はその手に少しの力を掛け
る。
「そうなんですか。 ――では日番谷さま、私の上においで下さい」
「う、うん」
優しい声と物腰とで誘われ、柔らかで良い香りのする雛森の身体に自身の体重を掛けないよ
うに気を遣いながら、日番谷は出来るだけゆっくりと身体を重ね合わせたのだった。
「雛森・・・・・こ、これで良いのか?」
「ええ。日番谷さまはお上手ですね」
「―――本当に?」
「はい。普通は最初はこんなに簡単には挿入りませんよ」
「そうなのか?」
「ええ。どうか自信をお持ち下さい」
温かですこぶる気持ち良い雛森の中に包まれ、そして褒められた日番谷はもう夢中で細い腰
を揺らめかせた。
雛森の指導は適切でかつ判りやすく、飲み込みの早い日番谷は短時間の内に女性の身体の
仕組みをほぼ把握していた。
「雛森、お、俺、もう・・・」
身体の奥底から湧き上がってくるような激しい射精感に眉根を寄せれば、雛森の白い手が滑
らかな日番谷の背を撫でる。
「良いですよ。私の中で溶けて下さい」
耳に吹き込まれた声と同時に、日番谷は短く果てた。
そのまま雛森の上に崩れ落ちそうになり、慌てて肘を突いて上体を支えたが、息が上がるの
は止められなかった。
閉じていた瞳を開き、雛森を見下ろせば、柔らかく微笑んでいる女神の顔がある。
「雛森、俺・・・」
あとの言葉が続かない日番谷の身体を雛森は黙したまま両の腕で包み込んだ。
そうされて、初めて、日番谷は言葉よりも雄弁な人の腕の温もりを知った。
こんな時、言葉なんていらないのだ。
ただ抱き合っていてこんなにも満たされるなんて・・・。
そう思うと涙が出そうな程感激した。
「雛森、俺、市丸副隊長のことが好きなんだ」
暫らくしての日番谷の呟きに、「存じておりますよ」と雛森は可愛く笑う。
「うん。俺、あの人と結婚したいと思っているんだ」
「えっ! 結婚・・・ですか?」
流石に日番谷がそこまで決心していたとは知らなかった雛森は途端に慌てた。
もしかしてこの流れでいくと、協力して欲しいと頼まれてしまうかもしれないが、自分はそれに
は到底頷くことが出来ない立場にある。
しかし焦る雛森に対して、日番谷は雛森が思ってもいなかったことを口にして彼女を驚かせた
「俺、市丸副隊長と結婚するけど、雛森、お前のことも一生、大事にするからな!」
身体を繋いだままの誓言に、雛森は心の中が感動で一杯になった。
雛森には藍染惣右介という想い人がいるが、美しい少年の真摯な思いに魂が揺さぶられない
者などこの世にいないだろう。
「・・・・・日番谷さま・・・」
震える声でそう呼びかけると、日番谷は照れくさそうに笑って雛森の中から自身を引き抜き、
こてん、と、横臥した。白い敷布の上に白銀の髪が散らばるさまは薄ら紅い行燈の光の中で
すら息を呑むくらいに美しい。
「なんか雛森にそう呼ばれると他人行儀でこそばゆいな」
「・・・では、―――冬獅郎さま?」
呼び方を変えた雛森に、日番谷はさも嬉しそうに「うん。それがいいな!」と強く頷いたのだっ
た。
続く
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