第五話

市丸は決して急がなかった。

それどころか、なるべく長く日番谷の快楽を継続させようと長い指を使ったが、巧みな指使に

経験の無い日番谷はあっさりと陥落し、市丸の白い手の中に二度目となる精を放った。

「んぅ――――っ・・・」

幼いながら美しい骨格を有した身体が弓なりに反り返り吐精する様に、市丸は目を奪われた。

はぁ・・・はぁ・・・と、荒い息を吐き出し、全身を汗で濡らし、強すぎる快感の為に生理的な涙を

浮かべて碧の双眸を滲ませている日番谷に、堪らない愛しさが沸き上がってくる。

(あぁ・・・・・なんて可愛えんやろ・・・)

うっとりと心の中で呟く。

一方の日番谷は市丸の余裕とは程遠く、急速に自分の身を侵略し始めた倦怠感と眠気に戸

惑いを覚え、揺れる瞳を向けてきた。

そんな日番谷の意を間違いなく汲み取った市丸の唇が笑みを刷く。

「冬獅郎、眠うなったんやろ?」

「・・・・・う・・・ん」

自分の脱いだ着物を身体の上に被せられながら、根が素直な日番谷が躊躇いながらも返事

をすれば、市丸の笑みがさらに深まった。

「我慢せんでええよ。眠いのなら寝てええんよ」

「で、でも・・・・・」

「冬獅郎はまだ大人の身体を持ってへんのやもん。続けて二回出したら眠気を覚えて当然や。

ボクはキミが目覚めるまでずっと此処に居るから安心しておやすみ」

頬に優しく手を添えられてそう云われれば、日番谷の中に安堵感が広がる。

「本当に居てくれるのか?」

「うん。可愛えキミを置いて帰ってりはせえへんよ。・・・なぁ、冬獅郎、そないにボクと一緒に居

りたいんやったら、五番隊においで」

「五番隊に? ・・・でも俺、朽木隊長と約束・・・」

「ボクな、キミが五番隊に入隊してくれるんなら、キミと契ってもええ思とるよ」

自分の言葉を遮るようにそう云った市丸に日番谷は呆然となった。

―――契る? 契るって・・・・・。

頭の中が白くなりかけた日番谷に市丸が艶然と微笑む。

「大人の行為はアレで終わりやないんやよ。むしろこれからやわ。キミが朽木隊長よりボクの方

を選んでくれるぐらいボクのことを好いてくれとるんなら、ボクはキミとそうなってもええ思とるよ」

「・・・・・・・・」

「キミのモノをボクのココに・・・なぁ、云うてる意味分かる?」

袴の上から自分の身体の中心を押さえてみせる市丸に日番谷は真っ赤になった。

日番谷が男女の性交の何たるか、そしてどうやって子供が生まれてくるのかを知ったのは、ごく

ごく最近のことだ。

その内容を理解した時の新鮮な驚きは、まだ彼の胸の中の浅い処に残っていた。

そして、今自分の目の前にいる美しい年上の異性は自分とそうなっても良いと云ってくれている

のだ。

沸き上げる純粋な歓喜が日番谷の心をみるみる満たした。

果てしない喜びが精神を覆い尽くす。

「―――分かった。俺は五番隊に入隊する!」

きっぱりと自分にそう告げる少年に、市丸はうっそりと哂った。

「ボクの気持ち受け取って貰えて嬉しいわ。お前なんかいらんって断られたらどないしよう思て、ド

キドキしたわ」

そんなことありえないと、顔を赤らめたまま無言で激しく首を振る日番谷の白銀の髪を丁寧に梳き

ながら、甘く囁く。

「さぁ、そしたらもうおやすみ。ボクはキミが目覚めるまでちゃんと此処におるからな」

こめかみに接吻され、限界まで眠気を訴えていた身体に、精神的な癒しの効果も相まって、日番

谷はもう眼を開けていられなかった。

もう一度「おやすみ」と呟いた市丸の言葉を聞いた次の瞬間には、もう眠りの国へと誘われていっ

たのだった。



すやすやと寝息をたてて眠っている日番谷の側から身を起こした市丸は、もろ肌に肌蹴ていた上

半身の着物をきっちりと直し、隣室の襖を開けて布団を取り出し、それを床に延べると静かに部屋

を出た。


暫らくして戻ってきた市丸の片腕は温かな湯が張られた小さな桶を抱き、もう一方の手には肌触

りの良い上質な綿の手拭いがあった。

健やかな寝息を漏らしている日番谷を起こさぬよう、ゆっくりと丁寧な手付きで湯に浸した手拭い

で日番谷の身体の汗を拭き取っていく。

上半身を拭き終え、幼いモノを真綿で包むように清め、その手がそっと合わさっている太腿を軽く

左右に分け、付け根の部分に達したその時、市丸の眼に日番谷の秘所が曝された。

ソコはまさしく花の蕾の可憐さで慎ましく閉じられていたが、ソレを眼にした市丸のナカに淡い性欲

と共に生来の悪戯心が頭をもたげた。

「・・・・・冬獅郎、ちょっとだけええやろ?」

意識のない日番谷に形ばかりの了解を取った市丸は細い足を開かせ、その間に自分の身を入

れると、何者の侵入も赦したことがないであろうその場所に温かな手拭いを暫らく当てた後、身体

の中央に顔を寄せ、躊躇い無くソコを紅い舌で舐め上げた。

ぺろりと舐め上げ、舌先で軽く突付く。

「・・・・・・ぁ・・・・・ん・・・っ・・・・・」

薄い花の色をした襞をちょろちょろとくすぐるように愛撫すれば、僅かに日番谷の身体が身動ぎ、

甘えるような声が漏れ出た。

流石にそれ以上すれば日番谷が目覚めてしまうだろうと市丸は顔を上げたが、その真紅の瞳に

は、はっきりと情欲の光が見て取れる。

「可愛え、冬獅郎。・・・何時かキミのココにボクのモンを受け入れてや」

真剣な表情で剣呑な事を云い、日番谷が纏っていた着物を着せ、先程敷いておいた布団に小さ

な身体を横たえたのだった。





「・・・・・ん? ・・・あれ?」

日番谷が目を覚ました時、部屋の中はすでに暗く、枕元の行燈には灯が入れられていた。

はっとして、飛び起き、辺りを見回す。

自分が寝ていたのはいつも寝起きをしている自分の部屋で、何も変わった様子は見受けられな

い。

「・・・えっ? ・・・・・あれは夢だったのか?」

自分を訪ねてきた五番隊の副隊長との遣り取りを思い出し、頭を抱えそうになったが、襖で隔て

た隣の部屋から僅かに明かりが漏れているのに気付き、そこに居る人の気配を察して、夢なん

かじゃないと慌てて立ち上がった。

ぱん! と勢い好く襖を開けば、庭に面した障子戸に背を預けて本を読んでいた人物が顔を上げ

る。

「――――あっ・・・」

自分の目覚めを待っているという約束を守った市丸の姿を見て、日番谷は一声発した後、安堵の

為にほっと息を吐く。

「よう寝とったね。もう夕飯時やよ」

「うん。・・・・・ずっといてくれたんだな」

気恥ずかしさからそろそろと近付き、自分の横にちょこんと正座した日番谷に市丸は読んでいた

本を閉じ、その手を日番谷の頬に伸ばす。

「約束したやん。当り前や。それより喉が渇いたやろ? お茶淹れてあげるな」

どこまでも優しい市丸に日番谷が嬉しそうに頷く。

本来一介の院生に過ぎない自分が、護廷隊の副隊長という栄えある地位にいる市丸に茶を淹れ

させるなど言語道断なのだが、日番谷は黙ってその好意を受け入れた。

(・・・・・良いよな。お茶くらい淹れてもらったって。だってこの人は俺のこと好きだって云ってくれ

たんだから・・・)

そんな甘えを含んだ純粋な恋心を知る由もない相手は、すっと優美に立ち上がり、水屋に足を運

ぶ途中で日番谷を振り返り、次いで文机の方を指差し、事も無げに告げたのだった。

「そうや、キミが寝とる間に書類を作ったんよ。後はキミが署名して拇印を押して欲しいんやけど

ボクがお茶を持ってくる間に頼んでええやろか」

「あ、あぁ。分かった」

示された文机の前に座れば、墨を解いた硯と筆の横に、流暢な美しい字体の書面が広がってい

る。

市丸には躊躇無く応えた日番谷だったが、正式な入隊願書を目の前にすると朽木白哉に対して

申し訳なさと罪悪感が同時に込み上げてきた。

いくら天才の呼び声が高いとはいえ、まだその力量は未知数である自分を、自らの副官に迎える

と云ってくれた澄んだ紫の瞳を思い出し、ギュと唇を噛み締める。

だが、それでも、日番谷は選んでしまったのだ。自分に期待を寄せてくれた朽木白哉より、自分

の愛しい市丸ギンを!

筆を手に取り、一字一字心を込めて自らの名をしたためる日番谷に、もはや迷いはなかった。

(朽木隊長には明日の朝一番にお目に掛かって話そう。・・・お怒りは甘んじて受けるしかないし、

簡単には赦してもらえないかもしれないが、とにかくお詫びしよう)

そう決心した日番谷が署名を終え、最後に拇印を押し終えると、調度小さなお盆に湯呑みを乗せ

た市丸が現れた。

「はい。少し熱いから気を付けてお飲み」

湯呑みを差し出された日番谷が礼を云って受け取れば、市丸は文机の上に視線を落す。

「ああ。書いてくれたんやね。これでキミは来年の春には五番隊の三席や」

にっこりと微笑み掛けられた日番谷は、これからずっと市丸と共に居られるのだと胸を弾ませたの

だった。



                                             続く


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