第九話
雛森が纏っていた死覇装をゆっくりと脱がし、小柄な身体を敷布の上に横たえた市丸は、その
可憐で可愛らしい裸体に頬を緩め、僅かな光沢を放っている薄紅色の乳首を指のひらでそぉ
っと撫でた。
「おっぱい、少し張っとる? そういえば雛森ちゃんはそろそろ月のモンがくるんやなかった?」
「はい。明日か明後日頃には・・・」
「うん。そやったらあんまりおっぱいには触らんようにするわ」
市丸の気遣いに雛森は嬉しそうに微笑み掛けた。
「それからいつも云うてるけど、チョコレートの食べすぎはアカンよ。甘い物が食べたくなるの
は解るけどチョコは雛森ちゃんの体質に合わんのや。その可愛い顔がまたぶつぶつだらけに
なったら大変やからね」
頬を撫でられながらのこの忠告にも雛森は素直に「はい」と頷き、自分の着物を脱いで隣に横
たわった市丸に真摯な眼差しを向けた。
「ありがとうございます。市丸副隊長」
「ん? どうしたん? 改まって」
「貴方は一介の平隊員に過ぎなかった私に目を掛けて鍛えて下さいました。そのお蔭で私は
席官の地位を手に入れ、そればかりか憧れてやまなかった藍染隊長のお側に侍ることが叶っ
たのです。――この御恩は生涯忘れは致しません!」
瞳に強い光を宿してそう云いきる雛森に市丸は苦笑で応えた。
「あんな、雛森ちゃん、キミにはボクが手解きしてやりたいと思う程の資質があったんよ。まぁ
それはイズルも同じやけどな。ボクは自分の愉しみの為にキミらを鍛えたんや、だからキミは
ボクに恩義を感じる必要はないんよ」
さばさばとした表情で云う市丸に、雛森はいいえと激しく首を振った。
それにまた苦笑を返した市丸は、頭の高い位置で結っていた雛森の髪を解き、その髪を手櫛
で梳きながら言い含めるように語り掛けた。
「これは藍染隊長の受け売りやけどな、人生には皆平等に大きなチャンスがあるんやそうや。
ただ残念なことにそれをものに出来る人間は限られとる。いや、ヘタしたらそれがチャンスだっ
たことすら気付かん者もおる。だから雛森ちゃん、キミにはそのチャンスを掴んでそしてものに
するだけの運も実力もあっただけのことや。それに確かに藍染隊長にキミを引き合わせたん
はボクやけど、藍染隊長がキミを気に入ったんはキミ自身の才覚のお蔭なんやで」
「・・・・・市丸副隊長・・・」
出会った当初からそうであったが、市丸は決して雛森に恩着せがましい真似をしたことがなか
った。深い感謝の念を抱いている雛森にしてみればそれ故尚更、何かあった時は市丸の力に
なりたいという思いが強かったのだ。
己の存在全てを捧げて尽くしたいと願っている藍染とは別に、市丸は雛森にとって確かに特別
な存在であった。
「さて、お話はコレくらいにして、今日はボクのことたっぷりと可愛がってや」
にやりと笑った市丸に頬を指でつんつんと突付かれた雛森ははっとして、瞬時に気持ちを切り
替えて身を起こすと、「お任せ下さい」と無邪気な笑顔で市丸を見詰めたのだった。
「う〜〜〜ん! 本当に『神の乳』ですね!」
「・・・はぁ!? なんやて?」
「市丸副隊長のおっぱいは『神の乳』だと申し上げたんです」
自分の身体の上に乗り、無心で乳房を揉みながら平然と云う雛森に市丸は唖然とした。
「大きさも形も完璧で羨ましいです。それにもし市丸副隊長が赤ちゃんを産んだら、一度に三
人分位のお乳が出そうですよね」
「なんやそれ、おっぱいの大きさとお乳が出る量は比例したりせんのやで。第一三人分て三つ
子ってことかいな」
「いえ、違います。赤ちゃんと市丸副隊長の旦那様と、それから私の分です」
えへっ・・・と悪戯っぽく舌を見せる雛森に、市丸は咄嗟に二の句が告げなかった。
雛森の天然発言にはいい加減慣れているが、この自分が子供を産むという発想は流石に凄
すぎる。
「期待を裏切るようで悪いんやけどボクが赤ちゃんを産む日なんて永遠にこんと思うよ」
脱力しながらそう云えば、雛森は「そんなこと解らないじゃないですか」と強く否定した。
「市丸副隊長だって月のものがおありになるんでしょう?」
「うん。たまぁ〜〜〜にな。年に2度か3度、忘れた頃にやってくるわ」
「だったら可能性はゼロじゃないですよね」
「そやけど・・・。まぁボクのことは置いといて、雛森ちゃんは藍染隊長の子が欲しいんやろ?
頑張りや。ボクも出来るだけ協力してあげるわ」
「・・・・・はい。ありがとうございます」
市丸のエールに対して、何時に無く複雑な笑顔を見せた雛森だったが、それは一瞬のことで、
すぐに市丸への愛撫を再開させた。
小さく尖らせた舌先が皮膚の薄い敏感な場所を舐め、指紋がないのではないかと思える程滑
らかな指先が身体のあちこちを掠め、快感の小波を立てる。
雛森から与えられる癒しにも近い官能に市丸はうっとりと目を閉じていたが、雛森の頭が自分
の下腹部まで下がり、小さな両手に支えられたソレが温かな口腔内に向かえ入れられるや、
ポツリと呟いた。
「雛森ちゃん、ボクなぁあの子のこと騙してしもうたんや」
「えっ?」
「あの子―――日番谷はんはボクのこと普通の女やと思いこんどるんや」
「まぁ・・・」
「ボクがこないな身体やって知ったらあの子、ショックを受けるやろなぁ」
「・・・・・・・」
哀愁を帯びた声音に雛森は暫らく沈黙していたが、やがてきっぱりと言い切った。
「貴方の本当の姿を知って、それで日番谷君が貴方から離れるというのならそれは仕方あり
ません」
「雛森ちゃん」
「貴方が故意に日番谷君を騙したとしても、それに憤って日番谷君が貴方を嫌うのであれば
日番谷君の貴方に対する想いはそれまでのことであり、それは致しかたのないことです」
「・・・キミはホンマはっきりしとるなぁ」
市丸は半身を起こし、自分の身体を見詰めた。
その上半身は確かに成熟した女性のものであったが、下から半分は男性のものだった。
市丸は俗に『キメラ』と呼ばれる半陰陽だったのだ。
俯く市丸の頭を自分の胸に抱えるように雛森が続ける。
「それに日番谷君は例え最初は怒っても暫らくすれば五番隊に入隊して良かったと思ってくれ
る筈です。だって藍染隊長は人の能力を伸ばすのがお上手ですもの」
確かに隊長としての経験の差は藍染が朽木白哉に圧勝しているであろうし、雛森の言う通り、
藍染に鍛えられば死神としての進歩は早いだろう。だが・・・。
「日番谷君のことは彼が入隊した時に善処しましょう。私もお力添えをするとお約束します。だ
からどうか今は日番谷君のことで気に病むのは辞めて下さい」
「・・・うん。おおきにな。雛森ちゃんは優しいなぁ。大好きやよ」
雛森の労わりに市丸が微笑めば、雛森も市丸の銀糸の髪を梳きながら嬉しそうに笑顔を見せ
たのだった。
続く
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