既 望 ( き ぼ う )
「・・・ただいま」
「お帰りなさいませ」
「――! キミ、なんでおるん!?」
その日、疲労困憊で帰宅の途についた市丸は、自宅の玄関を開けるや、自分を出
迎えた人物を見て絶叫を上げた。
一人暮らしで、誰もいない筈の家に帰って来たのに、そこに自分の意中の恋しい
相手が待っていれば市丸でなくとも驚くだろう。
市丸をきちんと正座して出迎えた冬獅郎は、相手の驚きに対して淡々と説明した。
「藍染さんが俺をここに寄越したんだ」
「藍染隊長が?」
「あぁ。今年はあんたの誕生日に何もしてやれないまま彼岸に入ってしまって、毎
日忙しい思いをしてるから偶には息抜きをさせてやりたいとさ」
「・・・そうなん?」
確かに冬獅郎のいう通り自分は連日護廷隊の任務に忙殺され、今日やっと一段落
付き、明日は漸くぶりで休みを取る事が出来る様になったのだ。
「あぁ。なんでも云うことを聞いてやってくれって云われたぜ」
「な、なんでも? ・・・ってほんまに?」
瞳を開眼させ、ゴクリと喉を上下させた市丸に構わず、冬獅郎はすっくと立ち上
がった。
「突っ立ってないでさっさと中に入れよ。メシの仕度は出来てるけど、まずは風呂
に入るだろう?」
唖然として玄関に立ち尽くしている市丸を即すようにして、冬獅郎は先に立って
歩き始めた。
人の目で見れば時間も金も相応に掛けて造られたと分かる物であり、若くして護廷
十三隊の一隊を任された市丸に相応しい住みかと云えた。
だが市丸がこの家に帰るのは月の内半分にも満たず、普段は通いの者を雇って維
持だけには気を配っていたのだ。
―――何時の日にかこの家に冬獅郎を迎えて一緒に暮らしたい。
そんな思いを描きながら・・・。
カラリと脱衣所の戸を開けて先に中に入った冬獅郎は、竹で編んだ籠を指差して
告げた。
「あんたの部屋の箪笥から適当に着替えを見繕って持ってきたんだが、これで良か
ったか?」
「勿論や。・・・ん?」
自分の普段着の着物の横に見慣れぬ風呂敷が置いてある。
「これは何やの?」
今度は市丸が長い指で指したそれを冬獅郎は事も無げに「それは俺の着替えだ」
と応えた。
「えっ! それってまさか冬獅郎もボクと一緒にお風呂に入ってくれるん?」
「ああ。背中を流してやるよ」
「ほ、ほんまに〜〜〜っ!」
大興奮の市丸に対して冬獅郎は冷めた瞳で眉根を寄せる。
「風呂なんて何度も一緒に入ってるだろ。何がそんなに嬉しいんだ」
「だってそれはいつも藍染隊長の屋敷か、お出かけ先の話やん! 自分の家で冬獅
郎と一緒にお風呂に入れるなんて感激や!」
「・・・安い感激だな」
嘆息した冬獅郎はさっさと着物を脱ぐと風呂場へと足を向け、死覇装を脱いだ市
丸が慌ててその後を追う。
「ああっ、ええお湯や! 冬獅郎が沸かしてくれたと思うと格別や!」
広い湯船に二人並んで浸かりながら、市丸は嬉しそうに冬獅郎の幼い身体に擦り
寄る。
「冬獅郎にはこのお風呂は少し深すぎるやろ? ボクのお膝の上においで」
相手の返事を待つことなく、冬獅郎の華奢な身体を胡坐をかいた自分の膝の上に
乗せた。
「ほら、こうすると調度ええやろ?」
「・・・・・まぁな」
何時もなら余計な真似をするなと怒る冬獅郎も、藍染から遣わされたという立場
を自覚している為か、借りてきた猫の様に大人しい。
そんな冬獅郎に相好を崩した市丸は、幼い身体をやんわりと抱きしめ、薄っすら
と汗の滲んだ冬獅郎の項に唇を寄せ、愛しそうに触れるだけの口づけを落す。
「可愛え冬獅郎。―――大好きや」
「・・・もう身体は温まっただろ? 背中流すから一度上がれよ」
だがそんな市丸の抱擁をあっさりとかわした冬獅郎は、湯船から立ち上がると素
っ気無く云う。
せっかく一緒に風呂に入っているのだから、もう少し色気のある会話を楽しみた
い市丸だったが、冬獅郎の冷淡な態度に慣れているせいもあり、大して気分を害す
ることもなく、いそいそと従ったのだった。
檜の腰掛に腰を降ろした市丸の広い背を冬獅郎が無言で洗う。
たっぷりと石鹸を泡立てた上質の布で、ゆっくりと丁寧に隅々まで清めるような
冬獅郎の手付きに市丸はうっとりと目を閉じている。
「泡を流すのに湯をかけるぞ」
暫らくして、膝立ちの姿勢で市丸の背を流していた冬獅郎の言葉に、市丸の中に
僅かな寂寥感が生まれた。
「もう終わりなん? どうせなら前も洗ってくれへん?」
「・・・前ぐらい自分で洗えよ」
「キミ、藍染隊長になんて云われてきたん?」
奥の手をちらつかせれば、冬獅郎の目がすがめられる。
「―――分かった。・・・ったく、あんたみたいな奴に惚れてるってのが、あの人
の唯一の短所だよな」
聞き捨てならないことを云いながらも、新たに石鹸を擦りつけた布を手に、冬獅
郎は市丸の正面に回った。
相手の真紅の瞳の視線を避けるようにしながらも、耳たぶのすぐ下から首筋、鎖
骨へと、先程と変わらぬ丁寧な仕草で冬獅郎が市丸の身体を洗う。
広い肩と胸、鍛え抜かれた腹筋に、碧の瞳が僅かに揺れた。
やがて柔らかな布は銀色の下生えがある下肢に辿り着き、冬獅郎は市丸の一物を
やんわりと布で包むように持ち上げてゆっくりと上下に扱く。
「あぁ・・・気持ちええ! 起ってしまいそうや」
「だから自分で洗えって云ったんだ」
満足そうに目を細める市丸に対して、心底嫌そうに冬獅郎が吐き捨てたが、普段
から冬獅郎の冷めた態度に慣れ切っている市丸は平然と続きを即す。
仕方なく、筋肉が発達した両の太股、そして脹脛を交互に洗い、最後に形の良い
指が揃う大きな足を自分の膝に置いた冬獅郎は、それも大切な物の様に扱い清め、
最後に泡まみれの市丸の身体に湯を掛けて一連の作業を終えたのある。
「おおきに、冬獅郎。さぁ、今度は冬獅郎の番や。ボクのお膝においで」
「俺は自分で洗うからいい」
両手を広げて誘う市丸に冬獅郎は首を振るが、当然市丸はあっさりとは諦めない。
「そないに云わんとボクに洗わせてや。ボクが隅々までキレイにしてあげるわ」
「エロおやじか、あんた」
にこにことご満悦の表情で、自分の身体を抱き上げて膝の上に座らせる市丸に、
冬獅郎は珍しく逆らわなかったが、悪態をつくことは止めない。
「先に云っておくが、ここで本番は無しだぜ」
「え〜〜〜っダメなん?」
不満気に唇を尖らす市丸に冬獅郎は小さく嘆息する。
「当たり前だろ。こんな処で始められたら俺の身体が持たねぇし。第一折角用意し
たメシが冷めちまう。ヤルのはメシを喰い終わってからにしてくれ」
「・・・ごはん、って、もしかしてキミが作ってくれたん?」
冬獅郎の身体の上を這っていた市丸の手がピタリと止まり、真紅の瞳が碧の瞳を
覗き込む。
「ああ。あんたの口に合うかは保障出来ねぇが、藍染さんから充分すぎる材料費を
貰ったから品数だけは多いぜ」
「ほ、ほんまに〜〜〜っ!」
市丸にとって冬獅郎が我が家で出迎えてくれたということだけでも嬉しいのに、
一緒に風呂に入り、かつ自分の為に夕食まで作っていてくれたなどとは信じ難い奇
跡だった。そしてその夕食を食べれば本日のメインイベントが控えているのだ。
これは有頂天になるなという方が無理だった。
「ほ、ほんなら取りあえず今は身体を洗うだけにしとくな。後でたっぷりと可愛が
ってあげるよってな」
興奮の余り震える手を自分に伸ばす市丸に、「だからエロおやじはやめろって」
と冬獅郎はにべもない。
たっぷりと石鹸を泡立てた大きな手が自分の身体の彼方此方を撫で上げる官能的
な刺激に冬獅郎は大きな瞳を閉ざし、市丸の広い胸に身体を預けた。
「・・・ん・・・っ」
胸の尖りを指の平で軽く押しつぶされ、僅かな声をたてる。
「冬獅郎は敏感やなぁ」
市丸の感心したような声音が耳を擽り、ぞくりとしたものが脊髄を走り抜けた。
「・・・・・さっさと終わらせろよ。お楽しみは後だって云っただろ」
猫に蹂躙される鼠の心境が嫌で斜に出れば、今度は市丸の含み笑いが耳を掠めた。
「そんな物言いキミには似合わんわ。けど確かにそろそろ仕舞いにせんとボクも暴
走しそうやし、キミの大事なトコ洗って終わりにするとしよか」
言葉とは逆に余裕たっぷりな態度の市丸は、自分の膝の上で大きく開かせた冬獅
郎の下肢の付け根に手を伸ばす。
「・・・ぁ・・・・・」
幼いモノを大きな掌に包み込まれる光景とその感触に、冬獅郎は切ない吐息を漏
らす。
まだ他の部分の皮膚と同色をしている可愛らしいモノの根元にふっくらと付いて
いる小さな袋も丹念に擦り上げる優しい愛撫に、冬獅郎は鼻から抜けるような細い
声を漏らし市丸を悦ばせた。
「んんっ・・・あっ・・・ん・・・」
それに気を好くした市丸は、内心ほくそ笑みながら、冬獅郎のまだ堅い蕾に右手
の中指を押し当てる。
ゆるゆると円を描く様な刺激に、はっとなった冬獅郎が身を起こすより早く、指
の第一間接が秘孔に突きたてられた。
「あっ! 何すんだ!」
慌てて足を閉じようとする動きを難なく封じ、市丸は冬獅郎のナカに押し込んだ
指をぐるぐると廻す。
「痛くはないやろ? 気持ちええやろ?」
懐柔するようにやんわりと囁かれても勿論冬獅郎の抵抗が止む筈はない。
「馬鹿野郎! 抜け! ここではしねぇって云っただろ」
「せやかて、こない可愛いキミを見て我慢なんできん」
そう云いしな、指を根元まで押し込んだ市丸に冬獅郎は激高した。
「だからお前はキライなんだ! やめろって云ってるだろうがっ!」
振り向きざまに叫べばその唇が市丸のソレに塞がれてしまう。
くちゅりと淫猥な音をたて、二人の唇が合わされる。
冬獅郎の抵抗が止んだ一瞬の隙に指が引き抜かれ、新たに添えられた人差し指と
共に再び冬獅郎のナカに埋め込まれた。
「あっ、あっ・・・い・・・やっ!・・・・・ダメ・・・だっ・・・て」
狭い穴の中を押し広げられるような堪らない刺激が冬獅郎の身体を襲う。
市丸の唇から逃れた後、啜り泣くような声を漏らした冬獅郎に、市丸のモノがド
クンと反応し、形の良い唇を紅い舌がぺろりと舐め上げた。
その獣のような動作に冬獅郎が僅かに怯えた表情を見せれば、市丸はにっこりと
微笑んだ。
「そないに怖がらんといて。なぁ、冬獅郎、ボクはほんまにキミのことが好きなん
や。愛しとるんやで。だからこそ我慢できひんのや」
「・・・か、勝手なコト云うんじゃねぇ。ごたくを並べ立てても結局ヤリたいだけ
だろが! もう、いいっ! お前の好きにしたらいいだろう!」
「・・・・・ボクのこの気持ち、どないしたらキミに伝わるんやろ」
頬を紅潮させて怒鳴る冬獅郎に、市丸は一瞬だけ諦めたような悲しげ表情をした
が、自分の想いを振り切るように冬獅郎の身体を軽々と持ち上げ、そのままそそり
起つ自身の上へと落としたのだった。
続く
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