愛しき日々

風香る初夏のある日、誉高き護廷十三隊の副隊長四人がくつろぎながら雑談を愉しんでいた。

「気持ちの良い季節になったわよねぇ。朝晩過ごし易くて何も着ないで寝ても寒くないし」

護廷隊一の妖艶美女と云われる松本乱菊が機嫌よく微笑むのに、皆が頷く。

「腕の中に囲った相手の温もりに包まれて寝て、そして目覚めるなんて最高の贅沢ですね」

「おぉ! 流石、護廷一のタラシは云う事が違うっスね。檜佐木先輩」

「バカ野郎。・・・それはそうと阿散井、お前昨日は日番谷隊長と一緒だったんだろ?首尾はどうだっ

たんだ?」

「そりゃもうバッチリ! 好い思いをさせて貰いましたよ!」

喜色満面な笑みを見せる恋次に乱菊と檜佐木は盛んに羨ましがり、吉良が苦笑を漏らした。

「ちょっとぉ教えなさいよ。どんな事したの?−−して貰ったの?」

興味深々の乱菊の言葉に檜佐木も身を乗り出す。

「え〜〜っと・・・実はちょっと小道具なんかを使わせてもらっちゃったりなんかしましてですねぇ・・・」

「へぇ〜〜、お前にしては珍しいな。どんなの使ったんだ?」

「いろいろとですよ。こないだ現世任務があった時にそっち方面に詳しい奴がいて、興味本位で専

門店へ連れて行ってもらったら結局アレコレ買い込んじまって」

「それで? それで?」

テレながらも少し自慢げに話始めた恋次に乱菊が先を即す。

「まずはオーソドックスにバイブでしょ。ちょっと高性能のやつだったんで、日番谷隊長にはどうかと

思ったんスけど、意外に大丈夫だったんで次から安心して使えます」

「・・・・・ウチの隊長、そんなの使って怒んないの?」

不思議そうに眉を寄せる乱菊に二人が肩を竦める。

「床入りする時のあの人は大概はこっちの要望を聞いてくれますよ。・・・一度身体を繋いだ後なら殆

ど言い成りですし」

「乱菊さんだって知ってるでしょ? 日番谷隊長がどれだけ快楽に従順なのか」

恋次と檜佐木の言葉に乱菊は「う〜〜ん」と唸る。

「・・・で、日番谷隊長にはご満足頂けたのか?」

「いやそれがですねぇ、途中で見てるコッチが我慢で出来なくなって、結局あんあん云ってるあの人

からバイブ引っこ抜いて自分のモノぶち込んじまったもんで・・・」

ポリポリと頬を掻く恋次に「お前なぁ〜〜」と檜佐木が溜息を付く。

「後でメチャ怒られましたよ。勝手な事すんなって」

「そりゃそうだろうよ」

「もうちょっとでイケたのにって」

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

檜佐木、乱菊、吉良の三人の間に沈黙が広がる。

「・・・・・でも、隊長があんあん云って悦んだのは確かなのよね。・・・ねぇ恋次、私にそのバイブ貸し

てくれない?」

「えっ? 乱菊さんが使うんスか?」

「バカなこと云わないでよ。私はナマのお肉が一番! もちろん隊長に使うに決まってるじゃない」

「「え〜〜〜〜〜っ! マジっすか?」」

恋次と檜佐木の声が見事にハモったのを聞いた吉良はくすくすと笑う。

「大体ねぇ、ずるいわよ。あんたたちだけが隊長のこと抱けるなんて」

「仕方ないでしょう。俺達は男で乱菊さんは女なんだから」

「私だってオチンチンが欲しい!」

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

テーブルをドンとこぶしで打って絶叫する乱菊に男三人が黙り込む。

「・・・・・どーしても性転換したいってんなら、技局に行けば何とかしてくれるとは思いますけど・・・」

「バカ!阿散井! 乱菊さん、考え直して下さいよ。あんたのおっぱいは護廷隊の宝なんですから」

「・・・バカはあんたよ修兵。あのねぇ・・・私は何も女を辞めたいって云ってるわけじゃなくて、自分の

手で日番谷隊長を喘がせてみたいだけなの! −−で、恋次、貸してくれるの?くれないの?」

「え〜〜〜っと・・・どうすっかな・・・・・」

恋次は困った様に檜佐木に視線をよこし、檜佐木も又、困惑の表情を見せた。

「何よう、もったいぶらなくたって良いじゃない。−−お礼ならするわよ」

乱菊は妖艶な流し目を恋次にくれ、長い髪をかき上げて見せる。そのいかにも色っぽい仕草に男達

の喉がゴクリと鳴る。

「そりゃ俺だって貸してあげたいのは山々なんスよ。・・・ってか、出来たら乱菊さんと日番谷隊長と

自分の三人で愉しめたらサイコーだとは思いますよ」

「だったらそうすれば良いじゃない。私は隊長さえうんと云えば構わないわよ」

涙が出そうな程の有難い申し出に、普段であれば飛びついた筈の恋次だが、やはり返事は芳しくな

い。

「・・・いや、ちょっと、俺の一存で貸す訳にはいかなくて・・・・・」

「じれったいわね。じゃ、ウチの隊長の許可を取るわよ。それなら文句無いんでしょ?」

「いや、そうじゃなくて・・・」

「違うんですよ、乱菊さん。−−許可を取らなきゃいけないのは日番谷隊長じゃなく、市丸隊長にな

んです」

恋次の受難を見かねた檜佐木が横から助け舟を出す。

「ギンに?・・・でも、どうして?」

「そりゃあ日番谷隊長が市丸隊長のものだからに決まってるでしょ。・・・日番谷隊長本人もそれは

認めてるし」

「う〜〜〜ん。じゃあ恋次がウチの隊長に使った時もギンの奴に許可を貰った訳?」

「当然っスよ。俺も檜佐木先輩も日番谷隊長を抱く事自体は、別に市丸隊長の許しは要りませんけ

ど、何か目新しい遊びをする時は必ず教えろってクギ刺されてますから」

「そんなの黙ってれば分かんないんじゃない?」

「甘いですよ。絶対、バレますって!」

「そう!そう!−−−バレた時の『お仕置き』を考えただけで俺ら鳥肌立ちますからね」

檜佐木と恋次がそろってブルブルと首を振るのに、乱菊はふ〜〜んと肩を竦めた。

市丸ギンとは幼馴染である乱菊にとって、市丸の怖ろしさは今一ピンとこないものであるらしい。

「まぁいいわ。−−で、恋次はそのバイブを見せてギンに了解を得たってことなのね」

「いや、見せただけじゃダメで、実際試用させられますけどね。・・・そうなんだろ阿散井?」

檜佐木の言葉に恋次が顔を真っ赤に染めた。

「どういう事?」

「つまりですね、日番谷隊長に使う前に自分の身体で試さなければいけないって事ですよ。危険で

無いことの証明にね。勿論、市丸隊長の目の前でですよ。・・・まぁ、場合によってはその後で市丸

隊長自身が試して万全を期する時もありますよ」

檜佐木の説明に乱菊は自分の幼馴染の危なさというか、日番谷への執着の深さを改めて実感させ

られて頭を抱えた。

「・・・あんたたちそんな思いまでして道具を使わなくてもいいんじゃない?−−立派な自前があるん

だし」

「お褒めに預かって光栄なんスけど、やっぱいろいろと試したくなるもんなすよ。特に日番谷隊長み

たいに喘がせがいのある相手はね」

「自分意外に複数の愛人がいると解かっていれば尚更ね、正直俺らには比べられてる自覚はあり

ますから」

「う〜〜〜〜〜ん。男は男で大変だわね。やっぱり私は女で正解かも」

恋次と檜佐木の言葉に乱菊は肩を竦めて呟いた。

ここに集っている四人は全員が市丸ギンの愛人であり、吉良を除く三人が日番谷冬獅郎の愛人で

もあるのだ。

にも関わらず、反目もせず和気藹々としているのは不思議な光景だったが、彼らの中ではこれが心

地の良い環境であり、自然な事なのは傍目から見ても解かった。

彼らの不文律は唯一つ、『日番谷冬獅郎に関して市丸ギンを出し抜いてはならない!』という一言

に尽きるのである。そしてそれを守っている限りは市丸からも日番谷からも精神と身体の両方の悦

楽を得られるのだ。

まさに人生の甘露の蜜を口移しで飲ませて貰える。こんな美味しい関係を壊そうなどというバカはそ

うそういない。

彼ら四人は今の快適な状況が末永く続く事を心から願っていた。


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