それから私と日番谷冬獅郎、いや、天一神は永い永い時を市丸を求めて異空間の中を彷徨った。

 

 或る時は雷鳴轟く暴風雨の中を、

 

 或る時は灼熱の日差しが照り付ける中を・・・。

 

 天一神の氷の翼は時空のトンネルを抜けた途端、まばゆいばかりの輝きを放つ黄金の翼へと変化していた。

そしてその力強い翼はどんな劣悪な天候の中ですら少しも怯まずに羽ばたき続けた。

 

 いや、それだけではなく、天一神の探求は深い海の中、地中の奥底にまで及んだ。

 

 それは、おそらく市丸がもはや人の姿ではないと判っているかのようだった。

 

 

 

「大丈夫か、惣右介? 寒くはないか?」

 延々と続く氷河の上を飛びながら尋ねる天一神の優しい声。

 あぁ・・・そんなふうに気遣ってもらえるなどとは思ってもいなかった。

「私は大丈夫です。貴方の胸の鼓動はとても温かい。―――貴方様こそお疲れでしょうに」

 僭越とは思ったが、短い休息しか取ろうとはしない天一神が心配だった。

 そんな私に天一神が苦笑を漏らした気配がした。

「そうだな。俺も流石に疲れた。もう随分と長い間市丸の気配を探り続けながら翼を使っているからな」

「・・・・・」

 意外にもあっさりと弱音を口にした天一神の精神的な疲労を思い、私は暫しの間沈黙した。

 替われるものなら替わって差し上げたい。だが、小さな宝珠となって天一神の懐で護られているだけの

存在でしかない今の私には、どうすることも出来ない。

 己の不甲斐無さに暗く沈みかける私の心を引き上げるかのように、天一神がさらりととんでもないこと

を口にした。

「惣右介、お前、替わってくれるか?」

「―――え?」

 云われた意味が咄嗟に理解出来ない私に天一神が語り掛ける。

「お前と俺の身体を暫らく入れ替えるんだ。今度はお前が俺の力を使って市丸を探してくれ。その間、俺

が宝珠となって休息を取る」

「・・・そのような事が出来るのですか?」

 突然視界が明るく開けたかのような驚きに鼓動が跳ね上がる。

「あぁ、出来る。―――お前が俺の真実の名を知ればな」

――――真実の名!

 それでは貴方は私に貴方御自身の本当の名を告げるつもりなのか!

 名を知られるというのは支配されるということだというのに。

 あまりの成り行きに返事を返すことさえ出来ずにいる私に頓着せず、天一神が続ける。

「よく聞け、俺の真実の名は天之御中主命(あめのみなかぬしのみこと)だ」

「はい!」

 聞いた。確かに聞いた。

 この世界で一番大切な名を!

 自分が誰であるかを忘れても、決してこの御名だけは忘れまいと心に堅く誓う。

「言葉に出して唱えよ。それで俺の力はお前のものとなる」

「――――謹んで貸与致します!」

 

 私が尊い名を口にしたその瞬間、私と天一神の身体は入れ替わったのだった。

 

 

 

 

 

 果てしない旅はそれからも延々と続いた。

 

 星さえ凍えそうな荒野を、

 

 瞬きするのもつらい灼熱の砂漠を、

 

 私と天一神は互いの身体を入れ替えながら休みなく飛び、互いの愛しい者を探した。

 

 

 

―――――そして、遂に見つけた!

 

 

 

「・・・・・市丸」

 言葉を発したのは私が先だったのか、それとも天一神だったのか・・・。

 

 丈高い葦が生い茂る一面の湿地の中に『ソレ』は居た。

 

 市丸の気配を探り、目指す場所に辿り着いた私達が発見した市丸はもはや人としての姿をしていなかった。

 

 その下半身は銀色に輝く鱗とおぼしき物に覆われた長いものへと変化していた。

 

 だが、それでも見間違えようのない哀の紅い瞳と銀糸の髪は変わらなかった。

 

 

 

「・・・・・来てくれたんやね」

 

「・・・市丸・・・・・」

 

「ほんまに迎えに来てくれたんやね」

 

「――――俺の誓言に偽りはねぇよ」

 

「うん。おおきに。 ――――冬獅郎」

 

 短い言葉のやりとりの果てに私が見たのは、はるか昔にこの異空間の孔へと自らの身を躍らせた市丸が

最後に見せたのとまったく同じ儚い微笑みだった。

 

全てを受け入れ、全てを許し、そして、決して自分は不幸せではないのだとやんわりと相手に告げるそ

んな微笑だった。

 

「冬獅郎が来てくれることは判っとったよ。だから少しも寂しくはなかった。・・・でもなボクはキミに

そんなマネをさせとうはなかった」

 水面に半身を沈めて淡く微笑んだままそう云う市丸に天一神は激しく首を振った。

「馬鹿なことを云うんじゃねぇよ。迎えに来たんだ。さぁ、一緒に帰ろう」

「・・・ボクはもう人ではない。帰る場所なんてどこにもあらへん。なによりボクはキミには相応しゅう

ない」

「俺だって人の身じゃねぇよ。でも、人の心でお前に恋をしたんだ! それに相応しいかどうかなんて誰

が決めるんだ?―――市丸、俺にはお前が必要なんだ! 愛してるんだ!」

 天一神の激しい告白に市丸は息を呑んだ。

「・・・・・ボクがこないな姿でもええの?」

 今にも泣き出しそうな市丸に対し、天一神はきっぱりと告げた。

「こんな姿ってなんだよ。お前は綺麗だ! ずっとずっと昔から、お前程綺麗な者は見たことねぇよ」

 その力強い言葉を聞いた途端、市丸は両の腕を伸ばし、天一神に抱き付いた。そして天一神は小さな身

体全体で市丸を堅く抱きしめたのだった。

 

互いを抱き合う至福の抱擁は長く掛かかった。

天一神の幼い手が市丸の身体の背を何度も撫ぜ、市丸の指が何度も天一神の髪を梳く。

やがて二つの唇が重なり合い、小さな水音を醸し出す。

幾度も角度を変えてのそれが漸く解かれると、今度は相手の目をじっと見詰め合う。

 

そうして暫らくの時間がたってから市丸がはっとしたように云った。

「冬獅郎、キミ、懐に何を持ってるん?」

 問い掛けられた天一神は無言のまま、懐から宝珠と化している私を取り出して、市丸に差し出して見せた。

「――――なんて綺麗な宝珠なんやろう。それになんてええ匂いなんやろう。・・・あぁ、ボクはこの匂

いが大好きやった! 懐かしい匂いや」

 市丸がうっとりと囁いたことに私は内心で苦笑するしかなかった。

 その昔、天一神と共に閻魔宮に赴き、閻魔王からよもつへぐいを薦められた際に立ち上った沈丁花に似

た香りは、あの時以来私の体臭となっていたのだ。

 だが、流石に天一神から手渡されたのが変化した私だとは気付くまいと思っていた予想を裏切り、市丸

は両の手で私を包み込みんだ後、自分の頬に寄せて呟いた。

「・・・・・藍染さん・・・」

―――――!

「そうだ。俺と惣右介は共にお前を探しに来たんだ」

 絶句する私に変わって天一神が告げると、市丸が安堵したように穏やかに微笑んだ。

「あぁ・・・良かったわ。―――ほんなら藍染さんの願いは適ったんやね」

その瞬間、花の様な笑を浮かべたまま、市丸の身体もまた私と同じ宝珠へと変化を遂げ天一神の掌へと

収まったのだった。

 

 

 

「ふふっ。まさか藍染さんも一緒に来てくれるなんて思うておらなんだ。嬉しいわ。・・・ボクらおそろ

いやね」

「・・・ギン・・・・・」

 私への恨み言など一言も口にせず、まるで小さな子供が、大好きな友達と一緒の布団に潜り込んで満足

そうにしているかのような温かな労わりの声。

 だがその声音がより一層私の胸を締め付け、熱いものが込み上げてくる。

 

「――――ギン!」

 人としての姿を失い、こんな場所に長い間一人切りで、どんなに辛く悲しい想いをしたことか・・・!

 

 済まなかった。

 

 私が悪かった。

 

 どうか許して欲しい!

 

 お前を天一神に渡したくないという己の欲望の為に、この異空間の孔の中へお前を突き落とそうとした

私を、お前に辛い選択をさせてしまった私を許して欲しい。

 

 謝罪の言葉はいくらでも浮かんでくるというのに、悔恨の情が身体を満たしているというのに、肝心の

言葉を発することが出来ない。こんなことは初めての体験だった。

 おそらく人の身でいたなら、私は市丸の身体を抱きしめて泣いていただろう。

 

「・・・後悔しているのか? 惣右介」

 そんな私に厳かな天一神の声が降りてきた。

「はい。―――心から! 命様」

 天一神の言葉に縋りつく思いで私は応えた。

「それでいい」

「・・・・・えっ?」

「お前は今、この瞬間、心の底から悔恨の想いを溢れさせた。それが大事だったんだ」

「命様・・・」

「人はよく『後悔したくない』と口に上らせるが、悔やむというのはとても大切なことなんだ。俺がお前

を同伴させた本当の理由はお前に己の所業を心から悔やみ、反省して欲しかったからなんだ」

「・・・・・」

「そしてお前は懺悔してくれた。だからこそ、今、お前は『人』に戻れたんだ」

「・・・・・・・わ、たしが人に・・・」

「そうだ。惣右介、お前はもう『鬼』なんかじゃない! 人間だ!」

「――――!」

 強く、温かな声音に私は自身の魂が救われた事を知ったのだった。

 

 

 

「・・・さて、還るとしよう」

 暫らくの後、私の慟哭が落ち着くのを待っていたかのように云う天一神に、私と市丸は深く同意した。 

「尸魂界に戻ればキツイ裁きが待っているだろう。お前達も覚悟を決めてくれ」

「もとよりのことでございます」

「ボクは冬獅郎と藍染さんが一緒に居てくれるのやったら住むところなんてどこでもええ。・・・でも、

やっぱり本当は尸魂界に帰りたいかもなぁ」

 きっぱりと決意を述べた私に反して、市丸はやんわりと自分の希望を告げたがこれは当り前のことだった。

 そう、生あるものが尸魂界に還りたいと願うのはごく自然なことだ。何故なら尸魂界こそが魂の還るべ

き場所だからだ。

「あぁ。還ろう。―――お前達の魂の故郷へ」

 そう云って天一神が空を仰ぎ見たその時、今まで何もなかった空間に突如不可思議な紋様が浮かび上が

った。

 それは白銀に輝く正方形の中に丸が描かれ、その中で無数のモノが蠢いている恐ろしくも神々しいもの

だった。

 そしてその正方形を形成しているモノ達を目にした私ははっとなった。

 東に青龍。西に白虎。南に朱雀。北に玄武。

 それは天一神旗下の四神だった。

「やれ、手回しの良いことだ」

 天一神は別名を中神と呼ばれ、事あるときは十二天将の中央に立つという。その言い伝え通り、にやり

と不敵に笑った天一神は、私と市丸とをしっかりとその掌に抱え、その紋様の中心に向けて力強く飛翔し

たのだった。

 

 

 

「おぉ・・・! 天一殿」

「ご無事でなにより!」

 空に出没した丸の中で無数に蠢いていたモノ達を身近に見れば、それらはありとあらゆる姿の異形のモ

ノ達だった。

「貴公ら、これはどういうことだ?」

 天一神ですらこれら多数の出迎えは意外だったのだろう。忽ちのうちに回りに群がり次々と声を掛けて

くるモノ達を見渡して問い掛ける。

「いや、天一殿、貴方はご存知あるまいが天界ではエライ騒ぎだったのですぞ」

 遙か昔、閻魔宮で会った鳥の頭を持つ異形が息せき切って云う。

「騒ぎだと?」

「はい。貴方が愛しい者を追って異界に飛び立ったという話は長い間天界で語り草になっていたのですぞ」

「・・・・・それは・・・」

「閻魔殿が長年の間『遠見の水鏡』で貴方の姿を追い求め、この度目出度く貴方が探し人を見つけたが故

皆、祝いを云いに集まった次第」

「そうだったのか・・・」

 事の成り行きに納得した天一神に異形のモノ達が我先にと声を掛けてくる。

「よくぞ長きの旅に耐えてこられたものじゃ」

「ふむ。ふむ。流石、天一殿じゃ! 生半の者ならとうに諦めておろうに」

「いや、それ程に愛しい相手であったのだろう」

「そうじゃな。天界では『黄金の恋』と歌にまで詠まれた程じゃ」

 彼らが幾重にも天一神を取り囲んで喧騒な騒ぎになった時、落ち着きはらった声と共に、懐かしい姿が

上空に現れた。

「戻ったか、天一」

「ヤマ!」

「お主とお主の随身達の身は天帝よりこのわしに一任された。話は長くなる故、場所を閻魔宮に移すぞ」

「判った」

 天一神が頷いたのを合図に、異界の空に次元を形成していた四神達が一斉に身動ぎ、目の前の風景は一

変したのだった。

 

 

 

 

 

 幾千、幾万の蝋燭が燈る広大な部屋の中で私は閻魔王を向かい合っていた。

「惣右介」

「はい」

 あの時と同じ十二単を纏った美しい女人の姿で、そして野太い男の声で遠く離れた上座に座っている閻

魔王に対して、どういう訳なのであろうか私は初めてこの閻魔宮にやって来た時と同じ童の姿になっていた。

「只の人の子ではないと思うていたが、やれ、大層なことを仕出かしたものよのぅ」

「お詫びの言葉もございません」

 私は素直な気持ちで頭を垂れることが出来た。

 この後、どのような処罰が我が身に科せられても甘んじて受けるつもりだったが、一つ気になるのは、

天一神の身に天帝から何某かの咎めが無かったのだろうかということだ。

「私のことは如何様にもご処分下さいませ。しかし命様の御身は・・・っ!」

 私の言葉は半ばで、閻魔王の鋭い声に掻き消された。

「なんと、云うた!」

「・・・・・っ」

「惣右介、お前、今、なんと云うたのじゃ!」

 荒んだ大音声と共に、閻魔王の美しかった姿は忽ちのうちに天井に届くかと思えるような巨漢な壮年の

男の姿へと変わった。

 そして閻魔王はその誰もが平伏すような威厳溢れる姿で私に詰め寄った。

「惣右介、その方、まさか天一の真実の名を・・・?」

「―――――はい。命様御自身からお聞きしました」

 有体のままそう告げるや、巨大な閻魔王の身体から急速に力が抜け落ちたのが判った。

「・・・なんということを! なんということをしたのだ、天一! 人の子に『名』を教えるなどと・・

・! なんと愚かな真似をしたのじゃ!」

 いかにも悔しげに唇を噛み締め、眉根を寄せて沈痛な面持ちを曝す閻魔王に、私も静かに目を伏せた。

 あぁ・・・やはり神が人に己の力を譲渡するなどあってはならないことだったのだ。

 死神ですら己の力を人に貸し与えるのは重罰に値する。ましてや古くからその存在を人に知られている

格の高い神がするべき所業ではなかったのだ。

「聞け、惣右介。その方の口から天一の本名が他に漏れれば、天一は―――終わる!」

 

―――――!

 

 終わる? 終わるとはどういう事なのか? まさかその存在が?

 かつて市丸が空間の孔に身を躍らせた時と同様の、恐ろしく冷たい衝撃が我が身を襲った。

「・・・・・惣右介」

「・・・はい」 

ややあってからの呼び掛けに擦れた声で返事をすれば、そこには爛々と輝く冥府の王の金色の瞳があった。

「天一のことを思えば、今ここでお前を縊り殺したほうが良いのであろうな」

 人の運命の天秤を司る地獄の裁判官としてのそれと、天一神の親友としての情とを合わせ持つ強い瞳の

力を私も真っ直ぐに受け止めた。

 元より我が身のことは考えてはいなかった。

 私は人たる身に余る僥倖を既に得ていた。

 後は自らの行いの裁きを受けるだけのつもりだった。

 だから、今ここで我が身を閻魔王に引き裂かれても甘んじて受け入れるつもりでいた。

 そんな私の覚悟を秘めた眼差しに、ふと閻魔王の瞳が寂しそうに和らぎ、口元に苦笑が浮かんだ。

「だが、そんな真似をすれば天一は永久にわしを許すまい」

「・・・・・・・」

 私とは形こそ違え、閻魔王もまた深く天一神を想っているのだと改めて思い知らされる慈愛に満ちた声

音だった。

「――――惣右介、そなた辛い役目を引き受ける覚悟があるか?」

「はい!」

 唐突な閻魔王の問いに私は間髪入れずに応えた。

「何十年、いや、何百年かかるかもしれぬ辛い勤めであってもか?」

「私の全身全霊を持ってあい勤めます!」

 何をさせられるのかを問う気はなかった。もしそれが天一神の為になることであるならば、そして私が

犯した罪を少しでも償うことが出来るなら、むしろ辛辣な扱いにでも縋り付きたかった。

 言葉には出さずとも、私のそんな思いが伝わったのか、閻魔王が深く頷き再び語り始めた。

「わしはこの地獄を統べるに当たり、自らの麾下に十人の王を従えておる」

「はい」

 現世には古くから地獄に十人の王がいるとされる十王信仰があったが、ではそれは本当のことであった

のかと得心する。

「その中の殆どの者達はわしがその才を見出し育てた下級の神だが、時代を経るごとに入れ替わっておる

そしてその中には稀にだが人の子が混じることもある」

「・・・・・」

 朧気ながらに自分の役割を察し、私は膝の上で拳を握り締めた。

「―――近く、その中の一人の任を解いてやりたいと思うていた。・・・惣右介、そなたはその者の後任

を務める気があるか?」

「はい! 謹んで拝命致します!」

 およそ、人間の寿夭(じゆよう)を司取り、死者の生前の行為の善悪を裁く事ほど重責を担う仕事はな

いだろう。それにもまして尸魂界と虚圏、そして現世の三つの世界での重罪人である自分が人を裁くなど

慮外なことである。それでも敢てその役目を私に与えようとする閻魔王の思惑は理解の範囲を超えていた

が、今はそれを糺そうとは思わなかった。

 きっぱりと応え、両手を着いて頭を下げた私の上に、思いも掛けず閻魔王の感慨深い声が降ってきた。

「ふむ。・・・漸くわしの手元に来たか」

 その優しげな声に顔を上げれば、何時の間にか閻魔王の姿は元の美しい女人へと戻っていた。

「・・・尸魂界の霊王はの、十王の一人なのじゃ。十人の中で最も長くわしの下に着いておる。だがあや

つは何時の間にか本来の己の仕事を蔑ろにし、自らの保身のみに腐心するようになってしまった。わしは

あれへの情愛に目が眩みずっとそれを黙認しておったが、その結果としてそなたのように野心を抱く者の

台頭を許し、尸魂界のみならず、虚圏や現世にまで重大な被害を与えてしまったのじゃ。だが流石に今回

のことに着いては霊王を糺さねばならぬ。悲しいことではあるがな」

「・・・・・」

 美貌に憂いを浮かべられ、なんと応えたものかと黙すれば、閻魔王はそんな自らを振り切るようにヒタ

と私の瞳を見詰めて告げた。

「惣右介、そなたの任はそなたの想い人が現世へ転生するまでの期間と定めよう」

 そう云った閻魔王が白く細い手を翳すや、またもや風景が一変したのだった。

 

 

 

 

 

 私の身体は再び宝玉と化し、天一神の掌の中にあった。

 そして見渡す限り一面の砂漠のこの風景は、間違いなくここが虚圏であることを物語っていた。

 天一神と私、そして市丸の三人は、長い旅の出発点であるこの虚圏に戻って来たのだ。

「どうしても決心は変わらないのか?」

 天一神は私が閻魔王から与えられた責務を知っているのだろう、鎮痛な様子だったが、私自身の心は凪

ぎの海の様に穏やかで落ち着いていた。

「はい。私の全てを持って尽くす所存です」

 無理に力むでもなく、与えられた責任を満足して受け入れた私に対し、天一神は小さく嘆息したが、や

やあって、「そうか、分かった」と納得した様子だった。

「俺はお前がもし嫌だというのなら、お前と市丸を連れてヤマの手から逃げるつもりでいた。・・・だが

この度のことは俺もお前もヤマに心底感謝せねばならぬ。ヤマが人を裁くのは自らの管轄だと天帝に強

弁して、お前の魂魄の裁きを受け持ってくれたのだからな」

「はい」

「お前は尸魂界と虚圏、そして現世の三つの世界で任に当たらねばならぬ、まずはどこから始めるつもり

だ?」

「はい。まずはこの虚圏から手を着けたいと考えています」

「うん。・・・辛い役目だがお前になら耐えられると信じよう」

 天一神は少し残念そうにそう呟き、宝珠をなっている私を暫らくの間自分の胸に押し付けていた。

――――あぁ・・・。なんと満ち足りた幸福感なのだろう。

 この貴重な思い出さえあればどんな過酷な試練にも耐えられる。そんな気がする。

「俺とお前は長い旅をしたがこの世界では十日程しか経ってはいない。―――だがこれからは長い離別と

なるだろう。それでも俺はいつもお前を想っている。心丈夫に任に当ってくれ」

「―――はい!」

 泣きたいような幸福感に包まれている私に、同じように宝珠をなっている市丸が声を掛けてきた。

「ボクは冬獅郎とは立場が違う。藍染さんを訪なうのは自由や。・・・やから一年の半分は一緒にいられ

るわ」

 弾んだ声でそう云う市丸に私の心は躍った。

 本当にそんなことが許されるのだろうか?

 天一神と市丸とは、共に長い離別どころか、もしかすればもう遭うこともないであろうと覚悟していた

というのに。

「・・・惣右介、気を付けて行け」

 すっと翳された天一神の手から万感の思いで私は飛翔した。

 驚いたことに、その私の後に今まで何処に潜んでいたものか、数体の破面が付き従った。

 お前達を利用し、そして裏切った私を許すというのだろうか?

 私の心は再び悔恨の思いに満たされたが、それを糧にして今日よりは生まれ変わったつもりで責務に着

こうと決心したのだった。

 

 

  

 

 

 私が天一神と別れて六十年の月日が経った。

「藍染さん、藍染さん、ビックニュースがあるで〜〜〜っ!」

 この虚圏とそして尸魂界を行き来している市丸が、暫らくぶりで私の元を訪れ、はしゃいだ声音で告げ

てきた。

「尸魂界にな、一護ちゃんが来たんよ」

「一護?・・・あぁ、黒崎一護だね。そうか、彼も現世での修行を終えたんだね」

 依然として十二、三歳程の子共の姿のままの私は、年月の移り変わりに少し頓着がなくなったようだ。

「そないに悠然としとってええの? あの子、冬獅郎にもの凄いアプローチ掛けてるで」

 唇を尖らせてそう云う市丸がおかしくて軽く噴出してしまう。

「私よりお前の方こそどうなんだい?」

 水を向ければ市丸はふふんっ!・・・と、胸を張った。

「冬獅郎がボク意外の者を見るなんて有り得へんわ!」

 自信たっぷりに応えるその様子に思わず苦笑する。

「大した自信だね。それはそうと今度お前が尸魂界に帰る時にこれを命様にお渡ししてくれ」

 私がいつも政務に使っている卓の引き出しから取り出し、包んであった袱紗を広げて差し出した一つの

鉱物に市丸の目が吸い寄せられる。

「・・・なんやのコレ? ―――綺麗やわぁ!」

 滅多に物を賞賛しない市丸の言葉に私も頬を緩めた。

「琥珀だよ。この前偶然にこの虚圏で見つけた物だ。こんな風に発光して蛍光色に色を変える物は現世に

もままあるが、希少価値なのは間違いないだろう」

「はぁ・・・。それは大層な物やなぁ、けど・・・」

「うん? 何か問題があるのかい?」

 言葉を濁す市丸を問い詰めれば、少し申し訳そうに口を開く。

「藍染さん、堪忍なぁ。ボク、前に冬獅郎に、ボクから送った装飾品以外は身に着けたらアカンって約束

させてしもたんよ」

 チラリと私の顔色を覗いながらそう云う市丸に、やれやれと溜息を吐く。

「困った子だ。お前の独占欲も相当なものだね。」

「しゃあないやん。人間なんてみんなそうなもんや。好きな相手は独占したいもんなんや」

 悪びれなくあっけらかんと云う市丸に、私は確かにその通りだろうと軽く頷いた。

市丸は死神としては護廷隊の総隊長である山本元柳斎に次ぐ程長い、そして辛い人生経験を持っている

が、だからといって解脱の心境に辿り着いたかといえばそんな気配は微塵もない。どこまでいっても市丸

は市丸なのだと会う度に再認識させられてしまうが、それこそが『人間』というものなのだろう。

 そしてそんな市丸ギンを天一神は人として愛したのだ。

「私はそれを命様が受け取って下さればそれだけで満足だよ。命様がそれを身に着けられることまでは望

んでいないよ」

 やんわりと告げれば、「ほな、預かっていくわ。冬獅郎もきっと喜ぶと思う。ええ土産物が出来てほん

まに良かったわ」と嬉しそうに琥珀を懐に仕舞ったのだった。

 現金なその様子に再び苦笑した私は話題を変えた。

「もうすぐこの虚圏での私の成すべき事が終わる。そうしたら次は現世に移り、現世と尸魂界の仕事に着

手するつもりだ」

「いよいよ現世に場を移すんやね。現世の何処を拠点にしはるつもり?」

 興味津々に聞いてくる市丸に、私はふっ・・・と微笑した。

「お前には判っているだろう? ギン」

「――――比叡のお山やろ?」

「そうだ。この国の古い結界の地だよ」

「う〜〜〜ん。ボク、現世には嫌な思い出しかない。けど、藍染さんが居るなら訪ねて行くわ」

 なんの気取りもなくそう云う市丸に、私は黙って瞳を閉ざし、胸中で彼に心からの礼を云った。

 

 ありがとう。ギン!

 

 

 

 

 

虚圏から現世へと場を移す際、閻魔王の計らいで、一日だけ尸魂界へ還ることが許された私は、今、懐

かしい五番隊の執務室に佇んでいた。

部屋の中の調度品の配置は六十年前と少しも変わらずに保たれ、私が好んで読んだ書籍もそのままに本

棚に納められているのを見て、自分でも不思議な程の安らぎに浸された。

以前、使用していた卓に近付き、哀愁の思いでその面を一撫でしたその時、強力な結界を張った筈の入

口の戸がガラリと開いたのだった。

「おい、恋次、いるか? っ、と・・・」

 その声に振り向けば、十番隊の隊主羽織を纏った黒崎一護が、驚いた顔をして戸口に立っていた。

「え・・・えっと・・・・・」

「阿散井隊長は離席されておいでですが、何か御用でしたでしょうか? 黒崎隊長」

「あ、いや、大した用件じゃねぇんだ。・・・坊やは五番隊の隊士なのか? 俺と会ったことはないよな?」

「はい。今年霊術院を卒業して、この度こちらの五番隊にお世話になることになりました。どうぞよろし

くお願い致します」

 すらすらと嘘を吐いて頭を下げた私に、黒崎一護はにっこりと微笑んだ。

「そうか、頑張れよ。・・・坊やは賢こそうだし、霊圧も高そうだから努力すればきっとすぐに席官にな

れるぜ。何か辛いことがあったら遠慮なく恋次の奴に云えよ。あいつ見たくれはおっかなそうに見えるか

もしれないが、本当に好い奴なんだ。もし、恋次に云いにくい事だったら俺が力になってやるからな」

「はい。ありがとうございます」

 私の言葉をそのまま信じ、幼い外見の私を気遣う黒崎一護に私も素直に礼を返した。この黒崎一護の魂

の清廉さもまた天一神が彼を愛する所以であるのだろう。

 

 尸魂界での一日はあっという間に過ぎたが、私にとってのかけがえのない思い出がまた一つ増えたのだ

った。

 

 

 

 

 

 そして更に数百年の歳月が流れた。

 

 人一人の運命を左右する重要な責務と、決められた範囲内であるとはいえ、虚圏、そして現世、また必

要に応じては尸魂界への干渉も辞さずに精力的に任に当たってはいるものの、やはり時々は辛い責務を投

げ捨てて逃げ出したくなった。いや、気紛れな頻度で私の元を訪れる市丸の存在が無ければ、本当に耐え

切れずにそうしていたかもしれない程に神経を磨り減らしてさえいた。

 だが、私は耐え忍ぶことが出来た。

 

 そして遂にこの時がきたのだった。

 

 ゆっくり、ゆっくりと私が居るこの碧霞宮(へきかゆう)に近付いている貴方の気配。

 高鳴る自身の鼓動はもはや自分の物と認知出来ない程になっている。

 

そんな私の前に姿を見せた天一神は壮年の姿形をしていた。

 何時の日か『恋』をすれば呪いは解ける。―――それが真実であったと知ったのは、随分昔に久しぶり

に尸魂界の地にやって来た時だった。その時の天一神は十五、六歳に見える美しい少年の姿をしていた。

 だが、今、目の前に立っている美丈夫ぶりにも感嘆の息が上がる。

 天一神は死覇装を纏ってはいたが、いつもその上に羽織っていた一番隊の隊主羽織は着ていなかった。

そしてその右手に大切そうに一つの宝珠を持っていた。

 そして私にはソレが誰であるか瞬時に判った。

 

市丸が尸魂界での己の寿命を終えたのだということを・・・。

 

天一神と市丸は尸魂界で死神として添い遂げたのだということを・・・。

 

そして市丸が死神としての存在を無くしたのに伴い、天一神もまた人としての仮の姿を脱ぎ捨て、此処

に現れたのだということを。

 

「惣右介、久しいな・・・」

「―――はい。お久しぶりでございます。・・・あの、市丸は?」

「今は眠りについている。俺が起こさぬ限りは目覚めぬ」

 そう応えた天一神の碧の瞳が優しく細められた。

「惣右介、お前、見事な『国』を作ったな」

「えっ?」

 思いがけない言葉に無礼を承知で相手の顔をまじまじと見詰める私に、天一神はゆっくりと深く頷いた。

「昔、約束しただろう? ――――何時の日か、お前の国を見に行くと」

―――――!

 私は遙かな昔の別れ際の天一神の言葉を思い出した。

『俺はお前がどんな国を作るのか見てみたい気がする。お前の王都をな。―――何時の日か、お前の国を

見に行くよ。・・・例え今生で叶わなくても、お前ならいつか自分の王国を築くことだろうからな』

「・・・・・・・ぅ・・・ぅ・・・・・」

 喉から嗚咽が漏れ、ポタポタと大粒の涙が床を濡らす。

 

 憶えておられた。憶えておいでだったのだ!

 

そして私は、私に対して王道を歩むことを望んだ天一神の期待に応える事が出来たのだ!

 

生きとし生ける者としての千年を超える経験も、そして知識も、この歓喜渦巻く感情の荒波の前ではな

す術がなかった。

まるで本当の子供に還ったように涙を流す私は、大きな、そして温かな天一神の腕に包まれた。

「よし。よし。・・・さぞかし辛い日々であったろうが、よく頑張ったな」

 頬を濡らす涙が天一神の指で優しく拭われる。

「さぁ・・・もう、泣くのは止めよ。俺はお前を向かえに来たのだ」

「・・・・・命様・・・」

「まずは閻魔宮に赴き、ヤマにお前の任を解いてもらおう。そして共に行こう、俺達の『桜の宮』へ」

――――『桜の宮』! 天一神の意に適った者しか足を踏み込めないと云い伝えられる幽玄の地!

では、私はその資格を得たというのだろうか?

意を決した私は泣き濡れた顔で目の前の神に問い掛けた。

「・・・命様、お伺いしたいことがございます」

「ん? なんだ?」

「もし私が今持っている才を全て無くしたとしても、―――只の凡庸な人の子と成り果てても、貴方様は

私をお側に召して下さいますか?」

 私には天一神の応えが判っていた。だが、敢て天一神の口からその言葉が聞きたかった。

 天一神は一瞬目を瞬かせた後、高らかに笑って云った。

「何を云うかと思えば。そんなことは当たり前だろう。お前の才が欲しくばとっくの昔にお前を我が物と

しているさ」

 その言葉に満足し、ホッと小さく息を吐いた私に更に天一神は続けた。

「惣右介、お前にはその心だけでかけがえのない価値があるんだ。この俺を慕ってくれるその心だけでな」

「・・・・・」

 温かなその言葉を耳にした瞬間、私の胸中に以前から秘めていたある一つの決心は揺るぎの無いものと

なったのだった。

 

 

 

 

 

 天一神と私は閻魔宮に赴き、閻魔王と対面した。

「惣右介、泰山府君(たいざんふくん)としての長きの勤め、まことにご苦労であった」

 以前に一度見ただけの堂々とした威厳溢れる姿で私達の前に現れ、そして労いの言葉を掛けてくれる閻

魔王に私は深く頭を下げた。

「そなたの在位期間はかつてない程に平穏に世が保たれた。ほんに良い治世を布いてくれたものよ」

「ありがとうございます」

 私自身、自分が打ち出し実行した政策の結果には得心がいっており、この賛辞を素直に感謝して受け入

れることが出来た。

 

 私が天一神と別れた後、虚圏においてまず手掛けたことは、中級クラスの虚を浄化しながらも、大虚以

上の力を持つ者達を鏡花水月の力でその身体機能を麻痺させ、半仮死状態として結界に閉じ込めることだ

った。

 大虚を滅すること事態はなんの苦もないが、元々は幾百の魂魄が折り重なって生まれる大虚を片端から

引き剥がし、捌いていたのではそれだけで手一杯になってしまう為、これはやむを得ない処置だった。

 広大な地で、虚同士で共食いを繰り返している彼らを見つけ、手負いにならぬように捕獲し、身動きの

ままならぬように処理し、かつ外敵に襲われぬように結界を張るのはなかなか骨の折れる仕事だった為、

私の頭脳が弾き出した数を捕縛するまでに六十年の月日を要してしまった。

 そして次は拠点を現世に移し、現世での寿命を終えた魂魄を捌きながら尸魂界に干渉し、死神の育成に

尽力した。

 元々、悪しき虚が生まれてしまうのは、その虚となった者の生前の行いにもよるが、大多数の虚は死神

達の魂葬から取りこぼされた哀れな霊魂のなれの果ての姿なのだ。

 私が尸魂界に送られた頃、その時すでに死神の主な業務は瀞霊廷の守護となっていたが、大元の間違い

はそこにあった。勿論、死神達も現世での魂葬に手を抜いていた訳ではないが、いかんせん、人数が少な

過ぎたのだ。

 その当時、三千人と云われた死神の数は今やその三倍以上に増えている。

 そして今現在、彼らの最も重要な仕事は死が近付いた者の魂魄を見守り、迷う事無く尸魂界へと送り届

けることになっていた。

 その体制が確立したと確信出来た昨今、私は虚圏に単身で出向き、結界に封印しておいた大虚達を自ら

の刃で浄化し、尸魂界へと送った。

 そして今現在、『流魂街』と呼ばれていた地は無くなり、尸魂界に送られた魂魄が虚に襲われることも

殆ど無くなったのだ。

 

「そなた程の者を手放すのはまことに惜しいが、天一との約束じゃ。只今の時を持ってそなたの任を解く

としよう。これよりは『桜の宮』で穏やかに暮らすが良い」

 慈愛溢れる眼差しでそう云われ、私は天一神の後ろから礼をし、そして一歩前へと踏み出した。

「過分な御言葉、終生忘れは致しません。―――その御言葉に縋ってお願いが一つございます」

「ふむ。申してみよ」

「はい。貴方様のお力にて、私が命様の御名を他に漏らすことの無きよう、封印を施して頂きたいのです

その代償として、私の霊力と才能の全てを貴方様に差し上げます」

「―――なんと!」

「惣右介!」

 閻魔王と天一神の驚愕をよそに、私はやんわりと微笑んだ・・・つもりだったが、意に反し、一筋の涙

が頬を流れた。

「・・・命様は私が只の人の子であっても構わないとおっしゃいました」

 泣き笑いのような表情でそう告げれば、閻魔王は「ぅ・・・むっ・・・」と呻きに似た短い音を漏らした。

「よく考えよ、惣右介。そなたの才は人の子としては稀にも見ないものじゃ! ―――いや、泰山府君を

長年努めたことにより、その才はよりいっそう磨かれ、洗練され強固なものとなっておる。今のそなたの

『力』は天一とも互角やもしれぬ。しかもそれはそなたの努力次第ではまだまだ増すやもしれぬのだ!」

 勢い込む閻魔王に私は緩く首を振った。

「本当にそれで良いのか? 一度『力』を手放せば二度とは戻らぬのだぞ!」

「はい。構いません」

 きっぱりと応えれば、閻魔王の鋭い視線が今度は天一神に向けられた。

「天一、ぬしもそれで良いのか? 強力な力を持つ従者を侍らせることは我ら神にとって最高の誉れなの

だぞ」

「惣右介は俺の従者ではない。俺の友だ。・・・ヤマ、惣右介の望みを叶えてやってくれ」

 淡々とした天一神の言葉に閻魔王は深い溜息を吐いた。

「なんとも無欲な者どもじゃ・・・。ならば是非もない」

 すっくと立ち上がった閻魔王の右手の人差し指が私の額に触れた途端、私はその場で意識を失ったのだ

った。



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暁闇と暁光 八