作 井 英 人

平成17年11月、上海へ中国語研修旅行に行ってきました。 その折に、美術工芸品の展示館で、「八仙過海」という仙人を
玉石であしらった大きな衝立がありました。(下の写真) 帰国してから、この中国のことわざの伝説と意味を調べてみると次の
ようなことでした。

 

  
 「西王母の誕生祝いの帰りに八仙人が海を渡った」という伝説で、酒に酔った仙人達が海の中の仙女をからかったところ、   
仙女は怒って海を荒らし、戦いを挑んできました。八仙人はそれぞれの持ち物で戦い、やっと海を波り切ることができた。」と
いうことです。このとき、漢鐘離は芭蕉扇、張果老は道籤(占い用のぜい竹),呂洞賓は斬妖剣、鉄拐李は薬瓢箪、韓湘子は
順風笛、曹国舅は陰陽板、藍采和は花かご、何仙姑は如意笊(ざる)または蓮の葉を持っていたと言われています。

このことから、このことわざは、「八仙過海、各顕其能」という言い方もがありますが、「八仙が各自の能力を発揮して海を
渡る。各自の能力を発揮する。」という意味に使われています。また、おもしろい話としとして、八仙人が日本に向かう途中で
1人が海に溺れて七福人になったのでは、ということも言われています。

今年に入って仕事の関係で、射水市(旧新湊市)の放生津八幡宮にある昆布絵馬を拝見しました。(下の写真) この昆布
絵馬は、江戸末期に北前船で交易を行っていた商人が奉納したものです。この絵馬は、昭和60年6月8日付けの北日本
新聞に、北海道大学水産学部の大石圭一教授によって紹介され、「商売の繁盛を願って奉納したものであろうが、昆布流通
史の上で貴重な史料である。」と述べておられます。さらに、郷土史家の塩 照夫氏は著書「富山の絵馬」において、この
人物については、秦の始皇帝から不老不死の薬を求めるという命を受けて、東の海へ船出した山東の方士(不老長生術の
専門家)徐福であろう、と述べておられます。

 

  私は、この絵馬を拝見した際に、この人物をどこかで見たなあと思い、はっと、上海で見た「八仙過海」の写真のなかの
1人の人物と似ていることに気付きました。それは、衝立の写真中の右から3人目の人物「鉄拐李」です。

その理由は、@どちらも直接、海を渡っていること(徐福は、船で海を渡ったと言われています。) Aどちらも杖と瓢箪を
持っていること。B昆布絵馬の人物は、方士である徐福のイメージより、仙人のイメージであること、などです。この絵馬の
人物は、右手に昆布、左手に桃を持っており、これはまさしく北前船で運搬した昆布と薬を象徴し、商人が八仙人の一人に
航海の安全の祈りを託したようにも思えます。

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中国のことわざ「八仙過海」について
中国のことわざ「八仙過海」について