ガタンゴトンと時折、断続的に音をたてて走る列車の窓外には、ちょうど、なんという名前の川か分からないけど、
その両側の堤防には見事な桜並木が続いているのが目に入ってきた。もう、3〜4日もすると満開であろうか?
三四郎が東京で見たソメイヨシノは一週間位前には満開だったような気がするが、どうも今思い返すと、そこでの桜からは、
自分が数々の汚点を残してきたということばかりが連想され、「逃げていくのか!」と非難を受けているようにさえ感じる。
この川の桜堤
初出勤の電車の中は、昨日乗った時とは違いほぼ満員に近かった。ただ、普通の通勤電車と違うのは、
登山者と思われる者が結構目についたことで、大きなリックなどもチラホラと見かける。空席は一つもなく、
三四郎は入り口ドアを入ってすぐ左に、縦に取り付けてある
パイプの手すりに掴
「間もなく、愛橋、愛橋に停車します…」
シューッと列車が減速すると、前方に身体がつんのめってしまうのを、手すりを握っている右手にギュッと
力を入れて支えた。そして間もなく、三四郎の立っている進行方向右側のドアのガラス越しに、
小さな駅のセメントのプラットホームが目に入ってきた。3〜4人の乗客は、
ドアの方に向って列車が止まる前から降りる準備をしている。
シューッ、ゴトンと電車が止まり、降りる者が降りると、今度は、乗車を待っていた者が乗り込んでくる。
三四郎は、中へ入って来る乗客を見るでもなく見ないでもなくといった感じでボーッと眺めていたが、ふと、
3〜4番目に乗車したグレイのスーツの女性が、どこかで見たような人だなあと思った。誰だったかなあと
考えようとすると、そのとき、彼女の視線が三四郎の視線と真正面に合った。
ほんの一瞬であったが、微
ヒュルヒュルっと列車のドアが七割ほどのあたりで一旦止まり、2秒ほど間を置いてからパタンと完全に閉まった。
ブッブーっとブザーが鳴ったかと思うと、列車は、ガタンガタンとゆっくり動き出した。
(あっ、そうか! 昨日
やっと、思い出した三四郎は、彼女の方を振り向きながら、ちょっと自己嫌悪に陥
(それだったら、軽く挨拶くらいしてもよかったのではないか… 考えてみると、今までいつもこんな感じで、スパッと決断し、
積極的に行動が取れないことが、煮え切らないようで嫌だ! 「勘違い」「人違い」おおいに結構じゃないか!
そこから人のふれあいが生まれ、ドラマも始まるのじゃないか… 何もしないよりは…)
まあ、でも、そんな時に声なんかかけない方がわりと普通ではないかと思うが、とにかく、三四郎はそんな風に考えながら、
再び彼女の方を振り向くと、横顔の下の清楚なホワイトグレイの上着とスカートから、柔らかくしなやかな
雰囲気が漂ってくる。そして、胸元の右襟
三四郎は、これから長い付き合いになるであろう窓外の田園風景に目を移したが、
すぐに彼女のほうを眺
その後、三四郎は、たった10分足らずの時空の中で、彼女はひょっとして、毎日この電車で通勤してるのだろうか…
とか、ボーッと考えていた。はっきりと言葉で考えていたわけではないが、そうであればいいなぁ…と淡い期待をしていたようである。
昨日
そうこうしているうちに、列車は終点の馬場島に到着した。降り口側のドアの近くに立っていた三四郎は、わりとすぐに列車から降りる
ことができた。改札出口に近い車両から降りた通勤・通学生風の者は、皆、迷うことなく改札口を抜けて
駅の外へ一目散
三四郎は、駅を出ると人の流れから一歩横へ外れて立ち止まった。花に包まれた目の前の噴水、その後ろにメインストリートを
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まもなく商店街も終わろうとするする時、三四郎はフッと後ろを振り返って見たが、彼女の姿はなかった。
〔3ページ(未稿)へつづく(H16/4/18)〕

