1998年(平成10年)10月1日    北日本新聞 談論自由席
「境界争い」解消へ/筆界復元の地図を
  国土庁では昨年、十月一日を、「土地の日」、十月を「土地月間」と定め、本年度より本格的に啓もう活動を展開することになっております。最近、土地の境界をめぐるトラブルが増えてきました。昭和三十年代ごろまで、土地は 石垣や境石によって守られてきましたが、その後、大型事業や公共事業が活発に行われ、形質や筆界の目印が失われたことが要因として考えられます。

  しかし、何よりも大きな原因は、法務局(登記・所)に備えられている公図と現地とが一致 しないものが多いことです。不動産登記法第一七条には「登記所には地図を備える」と 規定されていますが、大部分は明治時代に作製された図面が使用されています。 今、、第一七条の基本精神である、土地の現況を登記に反映させ、筆界を現地に復元 できる地図の作製が急がれています。

  私たち土地家屋調査士会は、今回制定された「土地の日」に協賛し、国民めための「地図づくり」を提言しているところです。十月二十九日には国土庁、富山地方法務局、富 山県などの後援を得て、自治体関係者にも出席いただき、地図づくりをメーンテーマに 、阪神大震災を通じて体験した境界紛争の解決方法、地図の現況や問題点などを誓え るシンポジウムを全国に先駆けて開催します。

  このような提言に対応するように、政府は、ほぼ全省庁を網羅した「地図情報システム(GIS)関係省庁連絡会議」を設置し、地図に関する総合的なシステムの基本構想が策定されつつあります。

  また、政府や与党による司法改革の中で、今回新たに準司法機関による「土地境界紛争解決制度」の提案がなされたことは、境界紛争の早期解決を目指すものです。 社会二ーズにこたえ、官民が力を合わせ、国民のための地図づくりへ大きく前進したいものです。