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北日本新聞 平成21年4月10日掲載
冷たい雨が降った今月初めの午後、立山町前沢の富山地方鉄道立山線五百石駅近くで夫と写真館を営む佐伯純子(61)は、店番をしながらつぶやいた。 「このままでは寂しい町になる…」 計画どおりならば、同駅と一体化した町保健福祉総合センター「元気創造館(仮称)」の建設が本年度に始まるはずだった。しかし計画は今、宙に浮いている。佐伯は元町連合婦人会長で、基本構想の策定に携わった。通りを歩く人に目をやりながら「みんなが必要と思う施設なのに残念でならない」と話す。 元気創造館の整備は、平成十三年度スタートの第八次総合計画に位置づけられた町の懸案だ。十八年に就任した町長・舟橋貴之(43)は、町を縦断する地鉄立山線と連携した市街地活性化の拠点とする構想を打ち出した。三階建て約四千八百平方メートルで、保健福祉センターをはじめ図書館、町民交流センターなどで構成する複合施設だ。 町役場がある五百石市街地にかつてのにぎわいはない。買い物客は富山市や郊外の店に流れ、五百石駅の乗降客も下降線をたどる。そんな中、十八年度にまとまった元気創造館の基本構想は、商工関係者や女性団体など幅広い層の期待を集めた。 佐伯は旧立山町商工会女性部の役員を務めた経験もあり「核になる施設ができれば、人の流れが変わる」と思った。お年寄りや子供が世代を超えて交流できる場になると夢は膨らんだ。 財政難の町が大型の“ハコモノ”を単独で建てることは難しく、有利な国の補助事業を使って持ち出しを抑える必要に迫られた。これまでに総務省、農林水産省の事業を利用した整備が検討されたものの、用地や補助条件がネックとなって断念した。舟橋は、民間の資金・ノウハウを活用するPFI手法と、国土交通省の「まちづくり交付金」導入を考えた。同交付金を使えば、整備費十八億円の二割弱が補助金で賄える計算だ。 だが、昨年五月、臨時町議会で用地整備に必要な予算案が反対多数で否決されたのを発端に、町の計画をめぐって議会を二分する議論となった。「五百石駅は利便性が悪くないか」「規模が大きく、財政負担が多額ではないか」と異論が出た。 町と議会側の調整は難航し、規模を縮小した議長のあっせん案も退けられた。さらに九月定例町議会で建設地を役場周辺に移し、規模を縮小する議員提出の決議が可決されると、舟橋は計画の「凍結」を表明した。 「申し訳なかった」 今年二月中旬、立山町役場会議室。舟橋は、元気創造館の基本構想を策定した佐伯ら元委員七人に凍結をわびた。「私たちが作ったものは何だったのか」。委員から憤りの声が上がった。 佐伯も納得できなかった。求心力を失う五百石市街地の魅力づくりが急務と思っているからだ。「合併しなかったからこそ、どうしたら町が元気になり、住みやすくなるかを真剣に考えないといけない」と唇をかむ。 町の本年度当初予算に元気創造館の関連費用は盛り込まれていない。舟橋は三月定例町議会で「原点に立ち返る」と答弁し、関係団体の意見を再度聞く意向を示した。町民が待望する活性化拠点の整備はまた仕切り直しだ。(敬称略)
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