現在、メジャーレーベルに所属する唯一のプログレ・メタルバンド、ドリーム・シアターの8枚目のオリジナルアルバム。前作の来日公演では、何と日本武道館で行う程成功を収めてしまった。その模様を納めたDVDは本国米国ではプラティナ・ディスクを獲得!
こういう音楽に需要があるとは・・・正直、アンダーグランドで地道にアルバムを制作し、ツアーを続けるから活動があるからこそ、今までのファンベースがあるものだと思うが。
彼らは、プログレが時代錯誤とされた80年代後期にメタルとプログレの融合させ、シーンに登場。ヴォーカルにジェイムス・ラブリエを迎えて制作された名盤、2nd『イメージス・アンド・ワーズ』('92)で成功を納め、幾多のフォロワーを生むことになる。そのバンド達も現在見事に消えてしまっているが・・・以後こちらも名盤5th『メトロポリス・パート2』('98)ではロック史に燦然と輝くフーの『トミー』、クイーンズライクの『オペレーション・マインドクライム』と並ぶ、一大コンセプトアルバムを作ってしまった。
自分達の名盤を2作も作ってしまったアーティストに望むもの。デフ・レパードのジョー・エリオットではないが、「10年選手のアーティストはグレイテスト・ヒッツのセットリストでいんだよ。ファンがそれを求めるんだから。」という、ヒット曲がたくさんあるアーティストしか吐けない台詞がある。勿論、彼らはこういうアーティストではなく完全なるアルバムアーティストだ。
現在も活動を続けるプログレッシヴ・ロックの雄、イエスは『フラジャイル』('71)、『クロス・トゥ・ジ・エッジ』('72)の後、三度目の正直で『90125』('83)を作ってしまった。そんなことが、あるバンドなんてそうそうない。しかし、ドリーム・シアターも三度もやってのけてしまった。
彼らは、他のアーティストを圧倒する演奏力。大抵この手のバンドはテクニックに走り楽曲の質は疎かになるものだが、綿密に練られた構成。正に70年代のバンドをお手本にし静と動の緩急をつけたサウンド。20分もある大作をここまで聴かせるバンドはいない。今作は、そのテクニックを抑え気味に、メタリカの『ブラックアルバム』並に楽に聴けてしまうアルバムを作ってしまったのだ。ピンク・フロイドの『ダーク・サイド・オブ・ザ・ムーン』をお手本にしたと思える箇所も出てくる。(ジョン・ペトルーシってこんな良いトーンのギターを弾くんだっけ?)初めは物足りなさを感じる人がいるかもしれないが、ずーっと末永くつきあえる、彼らの決定版。そんな感じのアルバムだ。
<お薦め度>★★★★ 2005/6/25