ここでは掲示板で書かせていただいた、SSを掲載させていただきます。

以前より迷っていたのですが
林檎さまがリクエストしてくださってこの部屋を設置する決心がつきました。
林檎さまありがとうございました。



マイナスイオン


同じ空間にいるだけで癒される。
若島津はそんな不思議な力を持っている。
あいつの姿を見ただけで、どんなにイラついている時でも落ち着くことができる。
その身体に触れると優しい気持ちになることができる。

不思議なお前。

お前に話すと
「俺は日向さんにだけ、マイナスイオン出してるから。」
そう笑って答えたっけ。

何も望まないから、ずっと一緒にいて欲しいと思うのは贅沢な願いだろうか。


アドバイス

「なあ、反町、誰にも言うなよ。」
「なになに?俺が口堅いの、知ってるでしょ?教えてよ。」
「・・・やっぱ、やめようかな・・・お前に言ったら、明日には世界中に知れてる気がする・・・」
「失礼な。健ちゃんからいただいた秘密はもったいなくて、誰にも話せません。たとえこの身を裂かれようとも言いませんとも!」
「・・・なんじゃ、そりゃ」
「だからさあ、教えてよん♪」
「あのさあ、最近日向さんが俺に好きだ、みたいなこと言うんだよな」
「なんだ、そんなこと」
「・・・あっさり流してくれるじゃねえか(怒)」
「そんなん、俺はとうの昔に気づいてたからね」
「・・・おまえ、男が男に?!とか思わねえの?」
「まあ、お前らならアリかな、とか思っちゃうし。全然ダメじゃないよ。」
「・・・たださ、そう言ってるときの日向さんの顔が笑いを堪えてるようにしか見えないんだよね。」
「で、本気なのか不安なわけね?」
「・・・うん」
「俺が思うに、それは日向さんなりに真剣さの中にも優しさを表現してるんだと思うんだけど」
「あれで?バカにされてんのかと思うくらい腹の立つ笑顔だったけど?」
「日向さん、睨むのは得意なんだけど、笑顔は下手だからなあ。」
「なんで日向さんの表情が真剣さの中に優しさを表現してるってわかるんだよ?見たわけでもないのにさ?」
「だってそれ、俺が日向さんにアドバイスしたんだもん」





「春だなあ」
 コンビニからの帰り道、日向がのんびりとそう言った。
「俺さ、春って好きなんだよね。」
 そう言ってにっこり笑う。
 日向なら夏ってイメージだけど、春が好きってちょっと意外がも。
「なんだよ、その驚いたような表情は。」
 どうやら思っていたことが顔に出たらしい。日向は軽く睨んでいるようだ。
 「春ってさ、暖かくなってすごく気持ちいい。こうやってセンセイとゆっくり散歩もできるし。」
 寒さや暑さに弱い若島津は普段は近いところでも車で移動してしまう。確かにこんな季節じゃなかったら、滅多に外を歩くことなんてない。
「センセイが花粉症じゃなくてホント良かったよ。花粉症だったら、こんないい天気でも一緒に歩けないし、そのキレイな顔がマスクで隠れて見れないなんて悲しいしさ。」


恋の苦しみ


「なんだか、俺ばっかり夢中になってる気がする。」
 勝手に日向は他人の部屋に上がりこみ、気に入りのソファーに大きな身体をうずめると、不機嫌そうにそう言った。
 見るとちょっと泣きそうな表情をしていた。
「センセイと会えて、嬉しい気持ちや幸せな時間をたくさんもらえたけど、それ以上に胸が苦しくてツライ。」
 若島津はそっと近づきソファーの肘掛に腰掛けると、日向の意外と柔らかいその髪をそっと撫でてやった。
「苦しいよ、センセイ。どんなに言葉で『好きだ』と言ってもらえても、信じきれない情けない自分が身体の中にいるんだ。」
 センセイの心をその胸を引き裂いて見ることが出来たらいいのに。
 そしたら、この苦しみから解放されるのに。

 日向の告白を聞いて、若島津は驚いた。太陽の塊のようなこの男が、自分のためにこんなに苦しんでいたなんて。
「日向、俺だって同じだよ。」
 そう言って若島津はその頭を胸に抱きこんだ。
「俺だって・・・自分だけが日向から離れられなくなっているような気がして、すごく不安だったんだ。男だからとか、年上なのに、とか考えると動けなくなってしまって、自分の気持ちを素直に伝えられていなかったのかもしれない。」
 ごめんな。
 そう言って若島津は日向の大好きな春の陽だまりのような優しい笑顔を向けた。



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