四半世紀前の今日は#16

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本文は「文藝別冊 大瀧詠一」の細馬宏通氏の記述を参考にアウトラインを構成しました。

その他の参考文献

モノマガジン06年5・2号

サウンドレコーディングマガジン01年4月号

EACH TIMES VOL.1

オリコン・ウイークリー81年11・20号

 

画像転載元

www.t3.rim.or.jp/~t_abe/niagara/

モノマガジン06年5・2号

ミュージック・ステディー84年6月号

サウンドレコーディングマガジン01年4月号

 

 

 

 

  

 

 

 

四半世紀前の今日

12・3、木曜日の夜9時はTBSテレビ〈ザ・ベストテン〉の時間です。〈ザ・ベストテン〉は80年代の人気テレビ番組でランキング形式の歌謡番組の先駆者的プログラムでした。

その前週のランキングでナイアガラ・トライアングルの「A面で恋をして」は18位に初登場。そしてこの週のランクイン、そして3人の出演に、われわれの期待は否が応でも高まりました。

なぜならその夜は〈ヘッドフォン・コンサート〉当日であったのです。

 

 

 

「世界一奇妙なコンサート」と後に回想した大滝も、当日を前に、

「レコードのほうが完全で音もいいしね。今度のコンサートはそういったファンをも満足させられると思いますよ」(FMレコパル11月号)

と語っています。

 

客席のすべてがヘッドフォンをつけて演奏を聴く、PAとスピーカーを通さないコンサート。

FM電波を場内に飛ばして、客席に備え付けたFMウォークマン1200台に、客がそれぞれ持参したヘッドフォンを差し込んで演奏を聴くのです。

 

≪ウォークマン族 2210人集結!≫とは翌日のスポーツ紙の見出し。

 

湯浅学氏の分析が的を得ています。

≪ヘッドフォン自体はもっとずっと前からあったけど、ウォークマンの登場以降は音源を外に持ち出せるようになったわけでしょ。でもこのコンサートでは、それを屋内に持ち込み直してる。大滝さん流のアイロニーかなとも思ったね。≫(モノマガジン06年5・2号)

 

 

 

ここではまず〈ヘッドフォン・コンサート〉の様子を資料をひも解きながら紹介してみます。

 

開場5:30 サウンドチェック6:00 開演6:30

 

まず観客が集まったところで、入念なサウンドチェックが行われた。ステージ上ではなく、観客の側のサウンドチェックである。(ステレオ2月号) 

ウォークマンは1台につき2名で兼用になっており、ヘッドフォンのヴォリュームはもう一人の人との話し合いによって決められるという・・・

(音楽専科2月号)

 

周波数は78MHz 電波管理法に基づき半径100mの範囲に限られていました。(モノマガジン)

 

≪ところがみなさんラジカセ持参なのであります。渋谷公会堂の前に200人ものファンが集まり、場外向けのFM電波でコンサートを聞いていた。この電波はコンサートの実況になっていて、しっかりとDJのシャベリが入っているのであります。≫(音楽専科2月号)

 

 

 

 

 

≪ステージの細かい音が聞こえる反面、自分がした拍手まで、マイクを通して聞こえるので変な感じ。「よく聞こえすぎて、頭のシンが疲れた」≫(朝日新聞12・9)

 

≪音が良すぎてしまう。発想は良かったが、不自由な機械に縛られ、口ずさんだヒット曲の数々だった≫(ヤングギター2月号)

 

≪なんともまだるっこしい手続きだけれど、こうすれば、観客はレコーディングスタジオと同等の、完璧にミキシングされたステレオサウンドを聴くことができるのだそうだ。≫(週刊朝日12・18号)

 

という音楽記者とも思えない記事が、このまれに見る風変わりな集会の偽らざる感想を伝えているようです。

ただしオーディオの専門誌には次のようなレポートも残っています。

 

 

≪このヘッドフォンコンサートは、武道館などの音がメチャクチャになる会場向きである。さらに屋外コンサート向きでもある。≫(ステレオ2月号)

 

≪客のヘッドフォンに入る音は、LP『ロンバケ』を手がけたエンジニア吉田保氏が操る別室の調整卓によるもの。まさにレコードと同じミックスだ。ノイズが少々気になったが・・・≫(サウンドレコーディングマガジン2月号)

 

 

 

セッション内容に目を移してみましょう。

 

「FUN×4」からスタートし4曲続けて『ロンバケ』の曲をつないでいます。楽器編成の小さいものから順にミキシングを調整しながら、バランスを安定させていったのでしょうか。

 

つづいて「外はいい天気だよ」「青空のように」、そして「カナリア」をはさんで「指切り」へ。以前の作品が、いずれも『ロンバケ』サウンドで再現されていきます。

6月のコンサートでも取り上げているこれらの作品は、これが大滝のレパートリー中、ストレートに今作に結びついていることを表明し、ナイアガラの第1期が『ロンバケ』サウンドの実験作だったことが証明されました。

さらにつづいて「ウェンズデイ」が。現在唯一公式に聴くことができる「指切り」と、まったく同じアレンジでつづけて演奏されたことがすべてを物語っていますね。

 

 

 

 

 

休憩をはさんでの第2部では、ステージに24chのコンソールを持ち込んで、ミックスダウンの実演を公開しました。

「恋はメレンゲ」の4リズムの各トラックを順番に出し入れしながら、パーカッションやコーラスを重ねていき、エコーを足していく過程を客席が見守りました。

 

「これは日本でナンバー1のベーシスト、細野晴臣が弾いているベースです」 (客席やんやの拍手)

 

「林立夫のドラム」「松任谷正隆のピアノ」と紹介するたびに、ステージにいない彼らの5年以上前の録音に客席から拍手が送られます。

 

2曲目に、即興でミックスされた「想い出は霧の中」のオケをバックにヴォーカリスト大滝が歌う、〈歌入れ〉の一挙一動を、客席はヘッドフォンを通して〈生〉で聴く、というまたしても奇妙な光景を、われわれは想像でプレイバックすることができます。

 

 

「外タレ並みの入場料取ったので、あまり日本語をしゃべらないようにしよう・・・」

 

とお得意のジョークで笑わせたように〈ヘッドフォン・コンサート〉のチケットはS席が3800円、A席で3000円というものでしたが、2時間で完売したとも伝えられています。

 

参考までに当時人気のさだまさしが3000円、松山千春が2800円の時代です。

同じくこの12月、ワールド・ツアーから凱旋したYMOの武道館公演がちょうど3800円。〈外タレ並み〉とはこのことを揶揄していたのかもしれません。

 

 

 

さて舞台も佳境に入った終盤、スペシャルゲスト杉真理、佐野元春が一人ずつ登場。

杉は弾き語りで「街で見かけた君」を。佐野はこの豪華な『ロンバケ』セッションを従えて「サムデイ」を披露しました。ミキサーは前述のとおり吉田保。

 

そしてこの夜のクライマックスはなんといってもナイアガラ・トライアングルによる「A面で恋をして」です。

 

結局テレビカメラは現れずじまい。最初で最後のこのパフォーマンスを目撃できた2210人の幸運にはただ羨むばかりです。

 

 

 

 

 

ナイアガラ・ポップ・オーケストラの出張版。豪華なメンバーが大滝から紹介されます。

ドラム、ベース、キーボード、パーカッション、ギターと順番に一人ずつ自分のパートをプレイし、8小節ごとにサウンドが積み重なります。

そして全員を紹介し終わった時、「君は天然色」のイントロ、あの重厚なサウンドの渦が目の前に現れました。 この夜、ナイアガラの魔法をさりげなく解いてみせた瞬間でした。

 

 

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