四半世紀前の今日は#14

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

はじめに萩原健太著「はっぴいえんど伝説」でも印象的に取り上げられた「伝説の日」10・19付のオリコン・シングルチャートを再録したいと思います。

 

 

1位

2位

3位

4位

5位

 

 

10・19

ギンギラギンにさりげなく

風立ちぬ

ハイスクールララバイ

キッスは目にして

少女人形

16位

ストリッパー

52位

ごめんねダーリン

10・26

風立ちぬ

ギンギラギンにさりげなく

グッドラックラブ

キッスは目にして

ハイスクールララバイ

14位

ストリッパー

61位

ごめんねダーリン

11・2

ギンギラギンにさりげなく

風立ちぬ

グッドラックラブ

キッスは目にして

ハイスクールララバイ

11位

ストリッパー

72位

ごめんねダーリン

 

「ストリッパー」は伊藤銀次、「ごめんねDarling」は鈴木茂の編曲、そして「ギンギラギンにさりげなく」には山下達郎がコーラスに参加していました。

 

 

かつて「10年早い」と言われた彼ら。きっちり10年後、早すぎた彼らに時代がようやく追いついた瞬間です。

かつて彼らのスタイルを批判した者はみな、この実績を前に、その音楽を認めざるをえなくなりました。83年萩原をして「伝説」と言わしめたのは、そんな彼らの逆襲があった上で、でした。

 

 

そんな中、

10・21、この「伝説」の第2幕が上がります。

四半世紀前の今日は、松田聖子のアルバム『風立ちぬ』の発売日であり、ナイアガラ・トライアングルvol.2のシングル「A面で恋をして」の発売日でもありました。

 

今回はアルバム『風立ちぬ』を中心にこの「伝説」の1ページを紹介しましょう。

 

 

 

アルバム『風立ちぬ』には「記念碑的」とも言える2,3のポイントがあります。

まず一つは、松本隆が全曲作詞した最初のアルバムだという点です。

松田聖子の現在までのキャリアのなかで142曲を提供した松本の最も初期の作品集です。

クレジットはないものの実質プロデューサーとして、アルバム全体の演出、構成、作曲家の選定を指揮しました。

 

従来のライターと言うと、シングルのみならずアルバム曲においても三浦徳子−小田裕一郎、あるいは三浦徳子−財津和夫の作品が全体の9割を占めていました。したがって松本の参画は3年目への路線のマイナーチェンジを示していました。

 

彼の詞が詠う(うたう)少女の成長を写し撮った等身大のリアリティがリスナーの共感を得て、これまでの女性アイドル歌手や同時期にデビューしたアーティストとは違った大きな反響がおこりました。

 

 

 

もう一つは、作曲者に大滝詠一、鈴木茂、杉真理などのロック・フィールドのライターが起用されたことです。これまで松田聖子のようなトップアイドルに歌謡曲の楽曲を提供したことのない新鮮な顔ぶれでした。

 

80年以前のトップライター、筒美京平、宇崎竜童、大野克夫、井上忠夫、都倉俊一らではなくニューミュージック界の人材を起用するという初期の方針に、さらに松本人脈の実力者たちが加わって、歌謡曲のサウンド面の品質向上をリードしました。

 

これらのプロデュース・メソッドはすでに竹内まりやなどで見られた手法ではありましたが、81年の歌謡曲フィールド、つまりテレビのベストテン番組などを中心に活動するアーティスト、では画期的なことでした。

アルバム『風立ちぬ』は歌謡曲にまさに新風を立(おこ)したのです。

 

 

大瀧はここで、先行シングル「風立ちぬ」のほかに4曲を書き下ろし、提供しました。

とくにこれらは、大ヒット中の『ロンバケ』で打ち出したサウンドの五つのパターンをあえて下敷きにしたもので、彼はこの手法が歌謡曲に通用するかどうか、を確信的に試行しました。

 

「天然色」スタイルの「冬の妖精」

「スピーチ」スタイルの「ガラスの入江」

「カレン」スタイルの「一千一秒物語」

「FUN×4」スタイルの「いちご畑でつかまえて」

 

 

また、見落としてはいけないのは、同じくはっぴいえんどの盟友鈴木茂が、9曲のギター、B面4曲の編曲を手がけ、「黄昏はオレンジライム」の作曲をしている点です。

 

松本の詞に大瀧が曲をつけて茂がギターを弾く。松本がアルバム全編にわたって強力な指導力を発揮していることを示しています。

 

見開きの歌詞カードの左側のページ、A面の歌詞とクレジットの下に小さく

A side is supervised by Eiichi Ohtaki

と記されていました。耳慣れないクレジットに違和感を覚えたのはわたしだけでしょうか。これは、「プロデュースは松本だよ」と、暗に示唆したものだと推察できます。

 

 

さてもう一つ、幻に終ったために未だ公式には伝えられることのないアルバム『風立ちぬ』の「伝説的」エピソードがあります。

 

それは、

『ナイアガラ・トライアングルvol.2』に松田聖子とのデュエットを入れるアイディアがあった。

 

そして、

『風立ちぬ』の作曲を、ナイアガラ・トライアングルの佐野元春、杉真理、大瀧の3人だけで手がける、というコンセプトがあった、です。

 

 

『風立ちぬ』と『ナイアガラ・トライアングルvol.2』は同じCBSソニーで同時進行で制作されていましたが、ある時点では1枚のアルバムとしてまとめられていた、かもしれないということです。

 

つまり、聖子の歌う、「夢みる渚」や「週末の恋人たち」があったり、聖子とデュエットによる「風立ちぬ」が存在した、りしたかもしれないのです。

『風立ちぬ』と同時発売の「A面で恋をして」のタイトルがアルバム『風立ちぬ』のA面のことを連想させるのは偶然ではありません。

 

いずれにしろ、この「伝説」の企画が、結果的に2枚のアルバムとして我々に届けられたことは、疑いようのない幸運でした。

 

 

さて『ロンバケ』は10・19付で20位。5・11から10・5まで22週間トップ10内を維持し、売上枚数40万枚を突破しました。

 

 

 

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